2024.07.24 公開
そんな屋良さんに対し、銀座に店を構える同業者やこの店から独立して郷里に戻ってバーを開いていた仲間たちが「もう一度頑張りましょう」と言ってきた。
屋良さんは言う。
銀座レストラン&バー ST.SAWAIオリオンズ(※提供画像) 画像 6/7
「仲間たちの声に突き動かされました。クラブの経営者やママさんにも尽力していただき、資金を出していただける方とも巡り合うことができました。内装は今までの雰囲気を維持しつつ、老朽化していた水回りやガス周りを新調しました。新たに店を切り盛りする8人の仲間も加わりました」
屋良さんは再オープンすることを決め、常連客約1800人に手紙を送った。文面にはこう書いた。「皆さまのおかげで再びオリオンズの灯をともすことができるのは望外の喜びです」。
再オープンした店内でインタビューに応じた屋良さんは「ST.SAWAIオリオンズの雰囲気には不思議な力がある」としたうえで、こう加えた。
「店の雰囲気は昨日今日でつくれるものではありません。パッと入ってきたお客様も不思議とこの空間に馴染むように変わっていくんです。昔からオリオンズを利用されているお客様が出世して、社長になったという話を聞くと嬉しいですね」
50人は収容できる店内にホテルラウンジのような雰囲気を感じるのは、澤井氏がそもそもホテルマンだったことに関係している。国際バーテンダー協会(IBA)副会長を18年間務めていた澤井氏の凄みについてこう話す。
「澤井さんは大のお酒好きなんです。だからこそ自分にも厳しかったんです。バーテンダーという仕事柄、同業者の店に行くことがあるんですが、澤井さんは決してご馳走にはならず、自分のお金を払っていました。決して借りを作ることはなく、よくないところはしっかりと指摘するという性格でした」
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