歌舞伎の舞台で義太夫が出語りする際に太夫と三味線の居所である「文楽廻し」が語りの
シーンで使われるところも注目ポイントだ。また、実際の歌舞伎の衣裳である刺繍の美しい
打掛を身にまとい、花道から出てくる夕霧の姿は非常に印象的で、会場からもうっとりとした
ため息が聞こえてきた。

PSYCHO-PASS サイコパス 京都南座歌舞伎ノ舘×こえかぶ 朗読で楽しむ歌舞伎©サイコパス製作委員会 ©SHOCHIKU  画像 5/7

伊左衛門と夕霧の仲が認められ、身請け金が用意された。
年明けを控えた吉田屋の座敷は喜びに包まれ、
二人は幸せな新年を迎える。華やかな結末で物語は幕を閉じた。
二作目は、人間の諦念と執着が描かれた近松門左衛門の名作
『平家女護島（へいけにょごのしま）』「俊寛（しゅんかん）」。
平家滅亡を企て鬼界ヶ島へ流された俊寛僧都が、赦免の船が
訪れるも自らの身を島に残し、孤独と絶望に沈む様子を描いた物語だ。
俊寛を演じるのは狡噛慎也(CV.関智一)。俊寛の運命を変える海女千鳥と、非情な役人であ
る瀬尾太郎兼康という対極的な2役を巧みに演じ分けるのは常守朱（CV.花澤香菜）。
ご赦免船に乗ってやってきた瀬尾太郎兼康が読み上げる赦免状に、自分の名前がないこ
とに俊寛は絶望しますが、若い夫婦・成経と千鳥に希望を託し、自ら島に残る決意をする。

しかし、千鳥を都へ連れて行くために上使を討ち、罪を背負って孤島に留まることに。船が去
り、一人残された俊寛の悲嘆が人間の本質的な弱さを浮き彫りにし、観客の涙を誘った。
舞台は花道も用いて、巧みな演出で感動的な別れを描き、声優陣に惜しみない拍手が送られ幕となった。