そしてもうひとり、この生命力はどこからくるのかと思う熱演が凄まじい実力派女優・奥村佳恵。子供を授かった喜びから絶望、そして何年も続く子育ての苦悩すべてが感情のジェットコースターだ。彼女が唄う楽曲も大ボリュームで、その中でも千璃の笑顔でみるみる闘志ともいえる決心がみなぎるナンバーM15≪生まれた意味≫の歌唱は圧巻。きっかけひとつで変われる、強い愛と意思が胸に突き刺さります。
カメラマン:オノデラカズオ (C)2022,conSept LLC 画像 6/8
その美香に寄り添うクッションの様な夫を演じるのは和田琢磨。彼が持つソフトな佇まいや声のトーンが役とハマり、全身から優しさと愛がにじんでいる。どんなにすれ違っても家族への想いは変わらない、まさに縁の下の力持ち。本格的なミュージカル初挑戦というが、見事に彼の存在の大きさが物語そのものを支えているようにも見えた。
もちろんその他を支える役者陣も素晴らしく、様々なジャンルから集結している今作。多彩な個性で家族の物語をグッと引き締めています。特に家族と対立するオオクボ医師役の植本純米は、女形という二刀流も見どころのひとつ。ちょいちょい出てくる別役がいいエッセンスになっている。
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そんな痛々しい現実を描いているにもかかわらず、その感情を見事に浄化しているのが、高橋亜子による脚本・作詞と、作曲・音楽監修の桑原まこ。歌詞と楽曲の素晴らしさもとより全編生演奏という贅沢さで物語に深みを与えている。珠玉の歌詞やナンバーの一部はパンフレットで確認できるので、ぜひ手に取って欲しい。気鋭のクリエーター達のコラボレーションを堪能できる本作、東京公演は10月16日(日)まで博品館劇場にて上演。なお、大阪公演は10月22日~23日まで松下IMPホールにて上演。
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