2018.12.07 公開
Q.ちなみに、又吉さんが思い描く『絶景』ってどんなものですか?
又吉直樹:「いろいろあるんですけど、やっぱり感情が動く瞬間が記憶として残るのかなって思います。どうでもええような瞬間、日常のような瞬間でも『絶景』になりうる場合もありますし、滅多にできない体験をした時も、それが『絶景』になることもあります。例えばですけど、一日嫌なことがあって一人でバーに行って飲んでいる時に、高校生の時に聴いていた曲がたまたま流れて『明日からもうちょっと頑張ってみようかな』って思う瞬間があるとしたら、それも人によっては『絶景』と捉えるかもしれないですね」
────最近、心に響いた『絶景』な出来事はありますか?
又吉直樹:「今年の夏にサッカーのワールドカップをロシアまで観戦に行きました。もちろん僕はロシア語を話せないので、スタッフさんと一緒にカフェでお茶してたんですよ。そしてら、その店の近くに川があって一人で見に行ったんですね。橋の近くから川を見てたら横にボロボロの革ジャンを着たミュージシャンみたいなおじさんが来たんです。言葉一切わからないはずなのに『金貸してくれ』っていうのは分かったんです。それで『ノーマネー』って言ったらむちゃくちゃ寂しそうな顔をして『グッドラック』って言って去って行ったんですよね。
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