続いては、「春に舞う綿毛の弾むような気持ちを込めた楽曲です。」と紹介された「タンポポ」。高音から低音まで奥行きのある音色を饒舌にアコギで奏でていく。ソロパートでは各人が超絶テクニックでオーディエンスを虜にしていった。
ここで再びAKIHIDEがストーリーテラーとなり、絵本の世界へと導いていく。
このように、この日のライブは曲間でAKIHIDEのナビゲートを挟みつつ、音の旅を進行させていった。殺伐とした物憂げな世界観を複雑な構成や変拍子を組み込んだサウンドで構築した「砂の海」、ガットギターの切なくも温かな音色と優しい歌声が心を揺さぶった「ブリキの花」、独特な雰囲気を纏ったアダルトなナンバー「月夜のララバイ」ではウッドベース、ピアノ、アコギ、ソプラノサックスへと、凄まじい高速フレーズのソロの応酬を繰り広げ、場内をひと際湧き立たせた。終始絶妙な音量バランスと、安定したリズム、計算し尽くされたフレージングで支える城戸絋志のドラムも素晴らしい。
次の「月の舟」はAKIHIDEが1人残り、アコギの独奏を届けてくれた。力強くつま弾かれた弦の響きが何とも心地よい包容力を醸し出し、オーディエンスはみな自然と音に身を委ねている様子だった。続く「Namida」は、小林岳五郎の豊潤なピアノと、AKIHIDEの柔らかなガットギターの音色のみのアレンジで披露。2人の美しい音像がいつまでも胸を締め付ける名演だった。
中盤を迎え、メンバー全員がステージに戻り届けられたのは「風の歌」。サックス奏者の中村尚平が奏でる情緒豊かなフルートの音色、アルコ奏法で届けられた砂山“Sunapanng”淳一の卓越したウッドベースソロ、風が吹く様子をストラトで巧みに表現したAKIHIDEのギターテクニックと、ブラボーなプレイが次から次へと繰り出されていく。
この日最も激しさを増した「瓦礫の王様」でも各人のテクニックがステージを彩り、それぞれの個性を浮かび上がらせた。そして、ニューアルバムを象徴する1曲とも言えるヴォーカルナンバー「Ghost」をドロップ。サウンド、歌詞、歌声が三位一体となり、表現者としてのさらなる進化を感じさせてくれた。
さあ、ここでスペシャルゲスト、奇跡の歌声と称される注目のシンガー蓮花が呼び込まれた。絵本に登場する天上の声を持ったキャラクター“時計姫”のイメージに合うとAKIHIDEからのオファーを受け、アルバムの1曲「My Little Clock」のヴォーカルを彼女が務めている。
