「彼はアメリカの音楽シーンをよく理解していて、極端な話、彼が作った曲を歌うのが僕の目指す場所への近道だって言う人もいるくらい、僕にいちばん足りない部分を持ってる人でもあって。そういう人に僕の曲を預けたらどういう化学変化が起こるかっていうところだよね。やっぱり僕は日本人だからリアルなアメリカのシーンを知らないわけで、知ってるとしても偏ったものでしかないから」
——実際、化学変化は起きました?
「ミックスのこともあるし、今回は五分五分かな。日本人とアメリカ人の好みって真逆な部分があるから、そこは難しいところなんだけど」
——作詞もニック氏との共作ですが、どのように構築されていったのでしょう? 強い言葉が並ぶ中、行き詰まった現状を打破したいともがく今の世情を反映しているようでもあり、新たな一歩を踏みだそうとしているHYDEさん自身の心境も映し出されているように感じたのですが。
「基本的にはアメリカって常に怒っていないといけない、みたいなところがあって。例えばテイラー・スイフトも曲だけ聴いたらかわいいけど、歌詞を読むとどれも怒ってるじゃないですか(笑)。そういうところも鑑みつつ……僕の中で“法を守っていれば人を守れるのか?”みたいなことを思うことがあって。最近もアメリカで銃の問題があったけど、向こうにいると本当にリアルだからね。近所で発砲事件があったりとか、そういうのを目の当たりにしていると、法が僕たちを守ってくれるわけじゃない、やっぱり自分たちで立ち上がらないとダメだっていうか、それは向こうの社会全体の空気としても感じるしね。で、ミーティングで“最近、思っていることは?”って話し合っていく中で、そういったものがどんどん出てきて、それを最終的にニックが英語に当てはめていったっていう」
——なるほど。ではヴォーカリストとしては今回、どのように臨まれたのでしょう。例えばこれまでにはない歌い方に挑戦してみた、とか。
「歌の中で歪みが突然出てくるっていうのは今まであんまりやったことがないかもしれない。そういう意味では新しいと思うね。ひとつの歌の中で静と動が分かれているとか、そういうのはやろうと思ってたから。ただ、英語詞はやっぱり発音で苦労するんですよ。発音に囚われて、どんどん歌が下手になってしまったりするから難しい」
——難しいというのは声の表情とか、そういう部分で?
