2026年2月8日、J:COMホール八王子で東山奈央ワンマンライブ2026「祭-Matsuri-」が開催された。当日の朝まで東京では雪が降り積もったが、開場までに雪足は落ち着きを見せた。チケットは1部・2部含めソールドアウト。会場には今回満を持して発売されたライブグッズ「東山奈央推し法被」などに身を包んだお客さんたちが詰めかけ、見渡す限り真っ赤に。世代や性別を問わず人々が集まり、時折手を振って挨拶を交わしている様子は、本物のお祭りのような空気感だ。
【写真】J:COMホール八王子で東山奈央ワンマンライブ2026「祭-Matsuri-」が開催された東山奈央(4枚)
昼公演である1部。開演前は緞帳がおりており、どんな舞台セットなのかは見えない状態。幕が上がるなかで響いてきたのは、三味線と尺八の音色だった。東山ライブではお馴染みのバンド・レインボードッグスの面々に加えて、和楽器奏者たちの凛々しき姿が並び立っているというサプライズ! 揺らめく明かりを放つ行燈や灯籠といったセットも合わせ、客席からは感嘆の声が響く。
障子の向こうにシルエットが見えた直後、パッと華やかに登場した東山は、「雪の中、みんなありがとうー! 盛り上がっていきましょうー!!」と、「灯火のまにまに」を歌い出す。和柄をあしらったお祭り衣装で、番傘も携えつつダンサーたちと踊るなか、かんざしも美しく揺れる。
「早速みんな声をきかせてー! せーの!」とはじまった「ネバギバ音頭」では、「はいはいっ!」「ふっふー!」と、オーディエンスの合いの手がバッチリ決まる。冒頭の2曲の時点で、実は東山の楽曲には「祭-Matsuri-」というコンセプトにぴったりのものが数多くあるのだということにも気づかされていく。
「みんなのかわいいニパニパ、見せてください!」と、そのまま「君の笑顔に恋してる」へ突入。東山のライブでは名物となっている、スマイルを模したニパニパダンスを、2月8日というニパニパの日にみんなで楽しんでいく。初参加のお客さんにも気を配るのもまた、東山印といえるホスピタリティだ。
MCでは東山が、「皆さま無事にたどり着いてくださってよかったです!」と安堵の表情を見せた。ここで、魅惑的なパフォーマンスを見せていた和楽器奏者たちの紹介タイムへ。過去にライブやMVで共演してきた三味線奏者・浅野祥と、今回が初顔合わせとなる篠笛&尺八奏者の佐藤公基が、東山やレインボードッグスたちとコラボレーションしていくという、なんともスペシャルな日なのだ。
さて、「ダンスパート、いっちゃいたいと思います!」と宣言しつつも、ダンスパートをメドレー仕立てにした事実に改めて直面する東山。息継ぎもなく走り抜けるような構成だが、「セットリストをつくったのは私なので頑張ります……」と笑みをこぼしながら踊り出す。
「オトメイロ」、「Mode Style」、「I Want You To Know Baby」──東山が「かわいい曲をつめこんだ」という、その名も「かわいい祭りメドレー」だ。もちろんキュートでありながら、手足の指先まで細やかに振りつけられた、さりげなく激しいダンス曲たちが次々に繰り出されていく。気になる年下の子と徐々に距離を縮めていく、大人の恋愛ソング「そういう感じのn回目」まで、ポップな楽しさとハイクオリティぶりを両立させる東山ライブならではのメドレーだった。
たっぷり聞かせるインストゥルメンタルのパートを挟んで、衣装チェンジをした東山が再びステージに。今度は紫をベースにした着物アレンジで、シースルーの長い袖、腰回りには短冊のように色とりどりの柄の帯が重ねられているという、楽しいデザインだ。
ここからは、しっとりとしたバラードパート。いつの間にかステージ後方に降りてきていた桜幕を背負いながら「春色」を歌い上げる(2018年リリースながらもライブでは初披露)。足元にスモークが立ち込めるなかでの「風空花人」は、原曲がケルティックなサウンドであるぶん今回は和サウンドによって新たな一面が楽しめるという、演奏の妙が味わえた。そして夜のジャズクラブに迷い込んだかと思うような鍵盤のイントロから、ダークな情念を東山が表現した「ゆれる」へ。行燈と灯篭の演出もあいまって、かげろうの炎舞とでもいいたくなる世界がそこにあった。
……と素敵なステージングを見せていたと思いきや、MCでは正反対の一面を覗かせるのが東山だ。衣装担当者がこだわったポイントである、スカート部分の多彩な帯にあしらわれたチャックを紹介しようといじっていたところ、東山の口からこぼれたのは「あーっ、こわした……!」という声。焦りながらテケテケと舞台袖に助けを求めにいく姿に、客席からはあたたかな笑い声があがる(幸い、東山カラーであるレインボーを表現したという帯のチャックは無事だった)。
バラードパートの続きとして演奏した「涙のレシピ」は、2025年放送のTVアニメ『かくりよの宿飯弐』エンディング主題歌だ。東山演じる主人公・津場木葵が想いを寄せるも遠く離れてしまった相手・大旦那のシルエットが、曲中にステージ後方の障子に映る。そのシルエットへ東山が手を伸ばすという、エモーショナルな演出が展開する。
空気は一転、ここからは一気呵成のロックナンバーが続く。「歌声を目印に」で東山が重心低く、足を踏み込みながらクールなボーカルを聞かせたと思えば、「FLOWER」ではスクリーンに花火が上がり、レインボードッグスの演奏もボルテージを増していく。「ワゴン」では、精一杯手を伸ばす東山の袖が、何度も宙に揺れ、舞った。バンドメンバー紹介を挟みつつ、会場は熱を帯び、赤いペンライトがステージに向かって波のようにうねっていく。
「(前略)全人類へのファンファーレ!」では、なんと!東山自身が和太鼓に挑戦。歌手自身は和太鼓を叩き、サビは観客が大合唱するという、この現場でなければありえない微笑ましい光景が広がる。「OVER!!」では、細かく刻む三味線とメロディアスな尺八、双方の音色がこの日のコラボレーションならではの見事な音像を紡ぎ出していた。




