2度目のMCで開口一番、「Xmasとは?」とMay'nも自虐的に語ったが、決してXmasを逸脱しているとは思わせない。むしろ音楽を楽しむための自由度の高さを感じさせる。それでも次の曲には、「冬の曲を歌いたくなる」「私の中で『May'n Xmas』といえば」という「Glorious Heart」を、この日大活躍のアコーディオンとMay'nのデュエットから。ギター、ピアノ、マラカス、カホンも加わり、青い天井ライトが光る中、鮮やかな楽曲を浮かび上がらせる。暗転し、ライトが赤や赤紫に変わると、パーカッションがタム位置のコンガで時を刻むようにリズムを生む。ピアノとギターを仲間にMay'nが愛らしく歌声を紡いでいく「My Lovely Thing」。先ほどの「シンジテミル」のc/w曲として3rd Singleに収録され、15年の時を経た曲。小瓶に入った観葉植物のような小品が心休まらせていく。
次のMCでMay'nが語ったのは、このあとに披露する「告白」のこと。アコースティックライブツアーである「Hang jam」ではリクエストコーナーが恒例になっているが、「告白」がリクエストされたとき、May'nも歌詞を確認するくらいに久しぶりの歌唱だったものの、あらためて歌ってみたいという想いが芽生え、『May'n Xmas』で歌うことを決めたと話す。微笑みながらギターとピアノと連れ立って歌い始めるMay'n。少し幼い声色で話しかけるように、包容力を感じさせるウィスパーボイスが会場を包んでいき、『Hang jam』での経験値が花開いていると感じさせる。歌い終わり、座ったまま礼をしたあと、暗転の中で立って水を飲むMay'nを待つ観客にもたらさられた次曲は「光ある場所へ」。ピアノにスポットが当たり、悲壮感ある演奏からMay'nが逆境に立ち向かおうとする意志を歌声に乗せる。ピアノとアコーディオンという鍵盤の饗宴が描くドラマに対して、静かに聴き入る観客たち。ラストも重々しく鍵盤から音色が放たれると、その余韻を味わうように会場には一瞬静寂が訪れる。再びピアノの音色が聴こえ、導かれた先は「もしも君が願うのなら」。「光ある場所へ」のその先、光を求めて力強く歩き出した姿を、May'nは歌声で、TEAM ONGAKUSHITSUは演奏で、一体となって表現した。2曲が織りなす雄大な時間が終わりを告げると、会場は目の前で右手を大きく広げる歌姫に向かって大きな拍手を差し出した。
『May'n Xmas』といえば昨年、この場で2025年青森ねぶた祭への参加が情報解禁されたが、続くMCでMay'nはそのときのことについて、ねぶた参加への熱い気持ち表明に30分も時間を費やしてしまい、ライブ後にスタッフから明るくお叱りを受けたというエピソードを披露。そして、青森ねぶた祭参加に関する一連の活動は、去る12月24日に発売されたドキュメンタリーBlu-ray『青森ねぶた祭を楽しみ鯛っっ!!-May’n 青森四日間の旅-』に収められているが、あらためて、ねぶた祭に参加し、前夜祭として当地でライブを行えた喜びについて語った。この流れから繰り出すは勿論「らっせーら!」。May'nが津軽弁を織り込みながら作詞した楽曲。会場の関係上、曲を披露する前に「絶対に跳ねないでくださいね」「上半身のみで」というお願いがMay'nから発せられたが、当のMay'nは歌い出しからクラップ全開、階段もないのにいきなり客席へと下りてみせ、「らっせーら」の声が林立する客席を練り歩く。最後列まで達すると一気にステージに向かって駆けていき、そのままマイクを持つ手を使わずに歌いながら背面跳びのようにステージに転がりながら上がってみせた。May'nは曲の最後、演奏が消え、自身も歌わず、観客の「らっせーら」だけで締めさせる。ここだけが青森市内の目ぬき通りと化した瞬間だった。
するとピアノが激しく鍵盤を叩く。「らっせーら!」と同じく今年発表した新曲で、『アズールレーン』8周年記念テーマソングの「genesis/destiny」。激しく歌い上げたMay'nから、チョーカーとイヤリングの輝きがこぼれていた。汗ではりつく前髪を直し、続いては「未来ノート」。原曲よりもBPMを落とし、より切々と、歌詞の一節一節で目まぐるしく表情を変えながら歌っていく。2番のサビを終えたMay'nは、会場を見つめ、みんなの笑顔に安心したのかうんうんと頷く。「未来は逃げないで待ってる」で会場を指さし、次に握り拳を作って「強くなったよ」と伝えるMay'nは、最後にその拳を胸にあてて「ノート」を閉じた。そして大きく息を吸うと、「青空うつしてどこまでも広がれ」とアカペラを響かせる。May'nの歌声にバンドが参加し、楽曲が力強く行進していく。「the SEA has dreams」は、観客によるコーラスの中、May'nが主メロを歌う合唱タイムが。そして入場時の「カンペ」(曲中で観客が参加する箇所の歌詞を書いたミニペーパー)配布が定着しつつある。曲間に設けた練習のターンでは、May'nは男性が歌いやすいように低音でお手本を聴かせたり、「もっともっと大きな声で」と言いながら自身も必要以上に口を大きく開けたり、会場を力強く引っ張っていく。曲の最後でも客席にコーラスをお願いし、「もっと歌いたい!」と叫んでもいた彼女。「今年1年の、ありがとう」という言葉には強い感情が込められていた。
そして最後の曲は「カラフルスコープ」。桑山哲也のアコーディオンで始まり、May'nと息の合った歌い出しを聴かせる。「カラフルスコープ」と歌うサビで毎回見せる、小さな手振りが可愛いMay'n。と思いきや最後は、右手を大きく開き、客席に手を突き出してフィニッシュし、「ありがとうございました!May'nでした!」と笑顔満面で、バンドメンバーと下手へと消えていった。
直後から会場で響く「部長」コール。その声に誘い出され、まずはバンドメンバーが先にステージへ戻ってきた。部長を待ち侘びる会場。そんな中、アコーディオンが「White Christmas」を聴かせてくれる。いつか『May'n Xmas』が行われていたXmasを懐かしく思う日が来る、そんな感傷に浸らせるようなサビが終わる頃、パーカーとホットパンツ姿のMay'nが入ってきた。マレットを手に、グロッケンでアコーディオンと協奏する彼女。そのメロディは、初めて開催された『May'n Xmas』でもカバーした曲のもの。ほぼ原曲キーに近い低音で、秘めたる情熱を表しながらMay'nが「いつかのメリークリスマス」(B'z)を歌ってみせた。切ないアウトロを迎え、その直後に流れてきたのはアコースティックギターによるスパニッシュなソロ。最初のストロークを一聴しただけで曲名が浮かび上がる。アコーディオンを迎え入れ、アコースティックギターとカホンが揃っているならば歌わない理由のない楽曲「promise」(広瀬香美)だ。だが、選曲の理由は、欲しいものがあるならコンテスト(賞品または賞金)で手に入れる、という中林家の掟からMay'nが少女時代に歌いまくった曲を20周年にあらためて、というものらしい。だが、だからこその原曲を感じさせる熱いアレンジ、力強く力強く歌い上げるMay'nの歌声、そして間奏とアウトロでカスタネットを利き手で叩くため、普段は左手持ちのハンドマイクを右手に変えるという思い入れも納得だ。鍛え上げ、練り上げられた伸びやかな歌唱を聴かせたあとは最後のカバー曲として「アイノカタチ」(MISIA)を。
正真正銘のラストソングを前に、May'nはMCで、愛知、大阪、東京、台北、山形、沖縄を巡る2026年のツアー『THE BEST of May'n』を告知。そしてバンドメンバーにトナカイのカチューシャまたはサンタ帽を配ると自身もサンタ帽をかぶって準備万端。帽子から出た前髪を気にしながら、客席からの「元々可愛い」に「知ってる」と脊髄反射を見せたのち、カスタネットにリングベル、そしてマイクの三刀流で「毎年歌ってきたこの曲も次はいつ歌えるかわかりません」「サイレントでなんかいられなーい!」との雄叫び。「ワン、ツー、スリー!」とカウントし、この日二度目の「サイレントでなんていられない」に突入した。May'nらしい、力強いロングトーンがXmasに鳴り響く。ピアノのグリッサンドに合わせて両腕を波打たせるMay'nは、全身でファンと過ごすラストXmasを味わっていた。客席に対しても、一緒に音楽を楽しもうと「歌って」と声をかけ、その声の大きさが物足りなければ「何上手く歌おうとしてるの!?」と自ら濁声にしての大声歌唱でリミッター解除を促す。またもやステージから下りたMay'nは、あっち行ったりこっち行ったり、会場を好き放題歩き回り、「全然声聴こえないんですけど」とマイクを向ける瞬間も。最後の瞬間が近づき、通路を舞い戻ってまたステージに飛び乗ろうとするも、このときはニーハイブーツだったためかうまく上れず。歌声が乱れる瞬間をマイクが拾っていたのは、ラスト『May'n Xmas』らしいシーンだった。最後は会場の全員で「May'n Xmas!」と声を揃え、Xmasライブを締めくくった。
この夜、幅広い楽曲、さまざまなステージ、貪欲にやりたいことを追い求める姿勢、そういった20年の積み重ねが結晶となったライブをこの夜見せてくれたMay'n。Xmasライブを終える理由もネクストステージへの第一歩である。Xmasライブを固定することでできることはつかみとった、今度はXmasライブがあることでできないものをつかみに行く。20周年イヤーの締めくくりとなる年明けのツアーも楽しみだが、今後、ツアーとXmasが重なれば、1公演をXmasライブにしてもいいと語ったMay'n。「終わりは始まり」を体で表現し続けるシンガーの「期待していてください」の声は頼もしかった。
Photo by SUGI
Text by 清水耕司





