2025.12.29 公開
ACIDMAN、オリジナルアルバム『光学』のリリースを記念したライブ『「光学」全曲初披露ライブ&第2回壇上交流会』東京・大阪両公演大盛況のもと閉幕!<オフィシャルライブレポート>

ACIDMAN(C)Victor Nomoto - Metacraft  画像 1/3

そして披露されたのが、「光学」を象徴する楽曲のひとつ「輝けるもの」だ。映画『ゴールデンカムイ』主題歌として知られるこの曲では、ストロボの閃光と無数の光線が交錯し、4つ打ちのキックに合わせて自然発生的なハンドクラップが広がる。スクリーンに映し出される星雲や銀河の映像と相まって、生命の誕生、その先に続く希望を強く感じさせる。しかもアルバムの流れの中で聴くことで、この曲は単なるタイアップ曲という枠を越え『光学』という大きな物語の一部として新たな意味を帯び立ち上がっていた。

続いて演奏されたのは「sonet」。WOWOW『連続ドラマW ゴールデンカムイ―北海道刺青囚人争奪編―』最終話のエンディングテーマとして書き下ろされたこの楽曲は、バタフライエフェクト現象をモチーフに、世界が目に見えないレベルで連なっていることを描いたミドルバラードだ。演奏が始まると、ステージ後方のスクリーンには歌詞が投影される。「世界は気の遠くなるような奇跡の繰り返しで成り立っている。そのことを誰もが知れば、世界は必ず平和になる」──そんな大木の信念が込められた言葉をあえて可視化する演出からは、この楽曲に対する並々ならぬ想いが伝わってきた。

続く「白と黒」は、人間が抱える二面性、善と悪をテーマにした楽曲。レコーディングではSOIL&PIMP SESSIONSのタブゾンビ率いるブラス隊が参加したジャジーなナンバーだが、この日は3人編成ならではの緊張感あるアンサンブル。佐藤はステージを大きく使いながらスウィング感あふれるフレーズを繰り出し、観客の身体を自然と揺らしていく。スクリーンに映し出されるのは、カラフルでアブストラクトなドローイング。タイトルとは裏腹に、単純な二項対立では割り切れない世界を多彩な色彩で表現するその映像は、大木のオプティミスティックな精神を象徴しているようだった。

ここで空気を一変させたのが、アルバムのリード曲「feel every love」である。ステージに呼び込まれたのは、一般公募とオーディションを経て選ばれた総勢20名のコーラス隊。黒い衣装に身を包んだ子どもから大人までの男女が並ぶ光景は、それだけでひとつのメッセージを孕んでいた。ゴスペルクワイアを従えた演奏は、オルタナティヴロック、ギターロック、ゴスペル、ミニマル/アンビエントといった要素を内包しながら、圧倒的なスケール感で広がっていく。後半、転調を重ねながら高揚感が頂点へと達する瞬間、会場には言葉にならない感情が満ち溢れていた。ACIDMANとして、そして大木伸夫という表現者として、この曲は一つの到達点といえよう。

インタールード「1/f(interlude)」を挟み、ライブは後半へと入っていく。浦山がシンセパッドを操り、柔らかく太いキックを刻む「青い風」では、オーロラのような映像を背景に、大木の囁くような歌声が際立つ。ミニマルな構成のなかで音の一つひとつが丁寧に空間へと放たれ、観客は食い入るようにステージを見つめていた。

続く「龍」は、本作の中でもとりわけ挑戦的な楽曲だ。ギターとベースが弦楽器のように響き合い、アンビエンスを重視したアンサンブルがじわじわと熱を帯びていく。歌詞に描かれるのは、戦争によって灰となった世界と、そこから舞い上がる龍のイメージ。破壊の先にある再生を神話的なスケールで描き出すこの曲は、アルバム後半へ向け物語をさらに深い領域へと導いていった。

一転して「蛍光」では、スピード感あふれる演奏とハードコアなサウンドが炸裂する。最小宇宙から膨張していく世界、その先に待つ〈不確定〉な未来を、取り憑かれたようにシャウトする大木の姿に、会場はどよめきにも似た歓声で応えた。そこからロマンティックな「光の夜」へと続くこの急激な振り幅こそ、ACIDMANというバンドの揺るぎない個性だ。

終えたあと、大木は本公演の意味を改めて語り始めた。今回のライブは単に新作を披露する場ではなく、アルバム『光学』が内包する世界観を「体験してもらう」ためのものだという。アルバムを通して聴くことで立ち上がるひとつの物語、その始まりから終わりまでを、できる限り純度の高いかたちで共有したかったのだと。

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