過去のライブ映像やMCの音声をインサートしながら、水瀬が10年の歩みをイラストなどで形にしていくブリッジムービーを挿み、ライブ後半戦は「Starry Wish」からスタート。パンツスタイルのスタイリッシュな衣装に着替えた水瀬が、リフターで2階ステージに颯爽と姿を現す。続く「スクラップアート」でのアグレッシブな表現、本ツアーで初披露のプログレッシブな新曲「NEXT DECADE」における激しく明滅する照明とカオティックな映像が合わさった圧倒的な世界観を含め、水瀬のアーティスティックでかっこいい一面を味わえるブロックだ。
その後のMCで、この10年、時に不安を抱くこともあったことを素直に告白しつつ、「好きだからずっと真剣に向き合ってきたアーティスト活動でした」と、ここまで続けてこれた感謝の気持ちを伝える水瀬。だが彼女の気持ちは過去ではなく、今と未来を向いている。「これからもずっと、何十年だって続くように、次の曲を歌いたいと思います」と告げると『Turquoise』収録の新曲「海踏みのスピカ」を披露。これまでのライブタイトルを彷彿させるフレーズが忍ばされた歌詞で10年の軌跡を辿りつつ、ラストのフレーズではファンも共に合唱しどこまでも君と一緒にという約束を確かめ合う。続く「TRUST IN ETERNITY」の乱雲に立ち向かうかの如き力強いステージングも心を震わせる。アウトロでのじっじーさん、どらちゃん、すまりの3人によるソロ演奏合戦も会場を熱狂させていた。
ここで嵐を越えて暁や月夜の中を風船が横切る幕間映像を挿み、ステージ前面に紗幕が降りると、ピアノのしとやかな調べに導かれて、紗幕の向こう側に黄色いドレス衣装に着替えた水瀬が浮かび上がる。まるで深海にいるかのような演出のなか歌われたのは「BLUE COMPASS」。楽曲の後半で紗幕が落ちると視界が一気に広がり、彼女は流れ星やコンパスの映像を背にしながらどこまでもいっしょにという願いを、会場のひとりひとりに想いを届けるように歌う。続いてセンターステージで歌われた5周年記念シングルの表題曲「Starlight Museum」では、途中で涙ぐんで声を詰まらす場面も。すかさず町民たちが歌い継ぐ絆の強さを含め、本公演でもとりわけエモーショナルで感動を誘う一幕だった。ちなみに「BLUE COMPASS」の紗幕演出は、2020年12月に横浜アリーナで行われた無観客オンラインライブ「Inori Minase 5th ANNIVERSARY LIVE Starry Wishes」を踏襲したもの。ようやくファンの前で直接届けることができて感無量の様子だった。
MCでも引き続き涙が止まらず、「次に歌う曲ももれなく泣いちゃうかもね」と告げた彼女が次に歌ったのは、ファンとの絆をテーマにした2ndシングル表題曲「harmony ribbon」。終盤、水瀬が「みんなの声を聴かせて!」と呼びかけると、アリーナ中がひとつになって「ラララ~♪」と歌う景色は壮観だ。そして「私たちだけのこの10年を、この曲に込めて咲かせたいと思います」と語ると、夢への純粋な想いを込めた心洗われるミディアムバラード「Innocent flower」を心から嬉しそうな表情と共に届け、かつての夢のつぼみを大きく咲かせてライブ本編を締め括った。
盛大ないのりんコールを受けてのアンコール。いのりバンドが演奏とクラップで盛り上げるなか、過去のライブ前の円陣の様子を全公演分繋いだ千秋楽だけの特別映像が流れ、水瀬は自身が考案したキャラクターくらりちゃんのトロッコに乗って登場。2ndハーフアルバムの表題曲でもある新曲「Turquoise」を歌いながらアリーナを周遊する。間近に水瀬が表れて色めき立つファンにたっぷりレスを返す交流も欠かさない。そしてアリーナを半分ほど回ったところで「Million Futures」を皮切りに自身初となるメドレーへと移行。引き続きトロッコに乗りながら「HELLO HORIZON」、メインステージに戻って「フラーグム」「glow」を連続で届ける。できる限りたくさんの楽曲と共に10周年ツアーを回りたい、という彼女自身の発案で実現したものだという。
その後、この10年の感謝の気持ちを改めて伝えつつ、「ここがゴールではありませんからね」と、未来の予定の新情報を告知。前日の公演で発表されたFCイベント「いのりまち町民集会2026」の開催決定に加えて、本公演の映像のオンライン配信が12月24日より行われることが決定。さらに水瀬の誕生日でありアーティストデビュー日である12月2日に「水瀬いのり10周年記念スタジオライブ」がYouTubeでプレミア公開されることが発表となった。詳細はオフィシャルサイトをチェックしてほしい。
そして彼女は「デビュー曲の「夢のつぼみ」を感じていただきながら、でも、今だからかける言葉をたくさん込めました」「自信をもってみんなに言える言葉を書きました。ぜひそんな気持ちを受け取ってほしいです!」と伝えると、自身が作詞した『Turquoise』収録の新曲「夢のつづき」をラストナンバーとして披露。バンドメンバー一人ずつの下に近づいて触れあいながら、楽しそうに幸せの歌を届ける。最初はひとつきりだった青い風船に、やがてたくさんの風船が寄り添って青空高く飛んでいく映像演出がクライマックスを盛り上げるなか、最後は銀テープが発射されて華やかにライブの幕は閉じた。





