クリープハイプは、1曲ごとに、観客たちの感情をいろんな世界へ連れ出していく。「夏のせいにすればいいからさ」と、彼らは『ラブホテル』を通して、この場を少し肌寒い夏景色に染め上げた。とてもエモーショナルでハイトーンな声を、尾崎世界観は心地よく駆ける演奏の上に乗せて歌っていた。曲が進むにつれ熱とグルーヴが増せば、身体や感覚を刺激する。このままクリープハイプのせいにして、頭を空っぽに、演奏に身を任せて身体を揺らしていたい。夏の魔法にかかった大勢の人たちが、大きく振り上げた手を揺らしながら、波間を漂うようにゆらゆらと揺れていた。
フィードバックしたギターの音が猛々しく鳴り響く。彼らは『身も蓋もない水槽』を通して轟音を振りまきだす。その上で尾崎世界観は、言葉を早口でぶつけるように次々と繰り出していた。とても感情的な、その感情さえ今にも壊す勢いで彼は言葉を繰り出していた。ノイジーでシューゲイズした爆音の上で、感情の赴くままに尾崎世界観は歌い叫んでいた。それこそが、今の自分らしい姿だと言うように…。
クリープハイプ<テレビ朝日ドリームフェスティバル2025>©︎テレビ朝日ドリームフェスティバル2025 / Photo by 岸田哲平 画像 3/5
唸りを上げたベースに絡みあうようにギターの音が襲いかかる。さらに感情の牙を剥き出しながら、尾崎世界観は『HE IS MINE』に乗せて言葉をぶつけてきた。悲鳴のようなギターの音が唸りをあげて炸裂。神経の数々を刺激し、感覚をトリップさせる歌声と演奏に高揚した観客たちが、振り上げた手を大きく揺らしていた。途中、尾崎世界観の合図を通して、観客たちが一斉に淫らな言葉を叫びだす。そこからは、一気に爆裂した演奏が会場中を包みこんでいった。
攻撃的なギターのリフが突き刺すように襲いかかる。一気に爆走した演奏が、身体を熱く騒がせる。尾崎世界観も、最初からテンション高く感情を剥きだした声でせまってきた。『社会の窓と同じ構成』だ。サビでは、場内中の人たちが手を振り上げ、放たれた想いをつかもうとしていた。ブレイク時には、場内中から熱い悲鳴のような歓声が飛び交う。そのうえで彼らは、テンションの高い歌と演奏をぶつけ、観客たちの感情を狂わせていった。とてもパワフルでアグレッシブでエモい楽曲だ。剥きだした感情を次々と演奏と歌声に乗せて叩きつける。その衝撃に触れ、身体が騒ぎ続けていた。
「もうすぐこの映画も終わる こんなあたしの事は忘れてね」と、尾崎世界観が弾き語りで『百八円の恋』を歌いだした。重々しいドラムの演奏が響くのを合図に、楽曲は一途に熱を持って荒々しく駆けだした。エモーショナルなんて言葉では形容したくない、感情のままに乱れ狂う。いや、みずからの痛い感情を強く主張するように歌と演奏が身体に突き刺さってきた。曲が進むごとに熱とテンションを上げていく演奏に合わせて身体を揺らし、もどかしさを胸に覚えながらも、熱情した感情の先に広がる世界を夢想していた。
クリープハイプは、さらにテンションのギアと速度を上げてせまってきた。強烈なエナジーの塊のような『愛の標識』に刺激を受け、ずっと身体を揺らし、手を振り上げていた。あらゆるエネルギーを濃縮してぶつける様や、挑むように歌い演奏をする姿に、気持ちがずっと吸い寄せられていた。最後に語った「死ぬまで一生愛されてると思ってもいいですか」の言葉も嬉しかった。




