2025.09.28 公開
内田彩、10周年ファイナルライブ『Re:1st / Re:birthday』レポート!

カメラマンクレジット:上田真梨子  画像 1/6


そのまま「オレンジ」「Merry Go」と続いたあたりで、今回のセットリストが当時の曲順を踏襲したものだと半ば確信。同時に、本ライブを新鮮な目線から楽しむファンの立場になってみても、『アップルミント』が名盤なだけにどんな曲が来ても楽しめてしまうし、それ以上にポップとロックのバランスがとても自然な最高のセットリストだと考えさせられた。この後の「10年前を懐かしむもよし」「10年というみんなとの歴史をなぞっていけたら」という意気込みのMCが、彼女と過ごしてきた各々の時間を肯定してくれたようにも聞こえる。

次ブロックは、9月29日(月)20時までニコニコ生放送にて販売されている、本公演の見逃し配信にて、ぜひとも映像付きで確認してもらいたい楽曲ばかり。披露順は前後するが、この10年間でファンが最大の愛情を育んできた「ピンク・マゼンダ」は、内田の足元に注がれたレーザーなど、マゼンダの世界が開けていく感覚を照明演出が視覚的にもたらしてくれた一曲。「キックとパンチどっちがいい?」では、あの頃よりも気持ち強めじゃないですか?とふと疑いたくなるほど、序盤から思いきりのよいキックとパンチを遠隔でお見舞いしてくれる。ラスサビで、ふたつの攻撃が歌詞とあべこべで繰り出されるのも愛おしい。

そして「泣きべそパンダはどこへ行った」である。内田は歌唱時、自身が装着するものとファンが持参してきたパンダ共演に胸を弾ませていたというが、この曲といえばかつて、2コーラス目冒頭でマイクとパンダを間違える伝説が(ちなみに、今回の物販で販売されたアクリルフォトフレームに、この瞬間を切り取ったブロマイドが付属していた)。はたして、今回はその点も含めてリバイバルとなるのか? 同パートに差し掛かった際、マイクとパンダの両方を胸元に引き寄せた内田。頼む、パンダの方であってくれ……と、会場の声なき期待を一手に背負うこととなったパンダ。その運命やいかに?


本編で、アルバム収録の全11曲。アンコールでは、2ndアルバム表題曲「Blooming!」などを歌い終えたところで、舞台袖にはける内田……だったものの、「ごめん、忘れてた! 違うの! まだです!」と、すぐさまカムバック。そう、この曲を歌わなければ、AYA UCHIDAの歴史は本当の意味で始まらない。約10年前、ステージでの緊張が解れてきたあたりで、気を抜いて歌詞を大飛ばししてしまった「Breezin'」。あのとき、アンコールに入ってのやり直しがなければ、この音楽活動における負けん気は育まれていない。たとえハプニングであっても、起こることすべてを愛せるようにーーそんな成長を実感させてくれる一幕なのだった。

昼公演の最後に披露したのは「with you」。唯一、当時のセットリストにはなかった曲である。ただ、この曲はいまや歌詞が本来的に持っていた意味を超越して、内田とファンを繋ぐ大切な架け橋となっただけに、歴史すらも超越してしまったに違いない。そんな歴史をこれから知っていくファンがいたとしても、この曲は純粋に客席で浴びていて楽しいから問題なし。冒頭、10年間を通しての「変わっても変わらなくても、みんなと一緒にいたら楽しいよー!」という最高の賛辞が即興で届けられたのだが、もし愛情になにか形があるとしたら、まさしくこんな感じだろうと思えてしまった。

あの伝説の二夜をリバイバルした今回のライブ。中盤のMCに出てきた「私もみんなも曲たちも、10年分の栄養がいっぱい蓄えられている感じがして、やっぱりライブが好き」「ライブでみんなと作ってきたんだな」という言葉は、内田の音楽活動の充実ぶりをなによりも象徴してくれていた。

そのうえで、いまや84もの持ち曲があるがゆえに、今回のようにアルバム1枚のみにじっくりと向き合い、しかも同じ曲を複数回にわたり披露して、その時々での違いを味わう機会もなかなかないもの。そんな贅沢な時間は、自分のことで精一杯だった10年前の自分自身に贈る〈大きなマル〉付きでのご褒美だったのかもしれない。

最新アルバム『Re:birthday』収録曲を次々披露! アンコールでこぼれたいろんな涙も

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