神秘的なオープニングを引き継いで、脈動する生の息吹を感じさせたのが「Steal a Kiss」。スパークラーの火花が14本も噴き上がるなか、3万人の視線と揺れるペンライトの光を堂々と受け止め、9人は艶めいた表情で8号車を誘惑していく。キスを求めるサビの振りはもちろん、曲中「こっち向けよ」とアロハが、「素直になれよ」とタクヤが曲中の決め台詞をニヤリと口にして場内に悲鳴を呼べば、リョウガは色っぽく首筋をなぞり、カイは余裕たっぷりに人差し指を立ててウインク。ユーキに至っては「好きなんだろ?」という台詞を「好きすぎてたまらねぇ」(7日)、「好きだよ、バーカ」(8日)と言い替えて大歓声を巻き起こした。続く「Re-Booster」では、まず2号車カイ、3号車リョウガ、4号車タクヤ、5号車ユーキの1桁号車と呼ばれる初期メンバー5人がメインステージに。2番では3年前の8月8日に加入した11号車シューヤ、12号車マサヒロ、13号車アロハ、14号車ハルの2桁号車が、入れ替わりでアリーナに突き出したセンターステージに現れ、それぞれダンサー陣が攻撃的なラップを放っていく。ラップでアクロバットを決めたタクヤは狂おしくウインクも決め、ハルもカメラ越しに8号車を挑発し、マサヒロとアロハは向き合って腰を揺らしたりと、艶っぽい仕草でも8号車を釘付けに。2組が合流してからユーキはバク宙まで繰り出し、そこからカイが手招きしての「Kura☆Kura」でも、センターステージで縦のラインを作って迫力あるフォーメーションを展開する。ここでポップ&コミカルに空気を一変させたのは「What’s up!」。応援団風の振りに合わせてペンライトを前に上に横にと振りたくる8号車は、大音量で「Hey!」とコールをあげて、さっそく熱い一体感を作り上げる。間奏ではメンバーが一言ずつ挨拶し、埼玉出身のシューヤが7日に「地元来たぜ! 最高!」とブチ上げれば、翌日ユーキは「8号車の日、おめでとう!」と8号車に呼びかけた。ちなみに「Kura☆Kura」と「What’s up!」の2曲は、現体制の9人でステージ披露されるのは今回が初。9人体制となって以降、ライブでは初登場となる楽曲がふだんにメニューに盛り込まれていたのも『EVE』ツアーの大きな特徴で、それはすなわち眠っていた楽曲に命を与える行為でもある。
序盤ではアグレッシブかつ煽情的な最新型の超特急で多彩に魅せる場面が続き、「What’s up!」の終わりにメインステージにダッシュしてからは、荘厳なインタールードを挟んで「LessonⅡ」が艶めかしい夜の世界へ8号車をエスコート。巨大LEDには神殿のような風景が広がり、まるで人の魂のような光がそこに集まると、重なリズムI love youという歌詞に合わせて9人が重なり合う振りやペアダンス、フロアダンスも交え、果てはタクヤがバサリとジャケットを肩からずらして大歓声を巻き起こす。さらに、天井のカメラが真上から端正なフォーメーションを映し出すダンスブリッジからタクヤが大きく蹴りを繰り出し、背後から足元まで張り巡らされた全面LEDに炎が燃えさかるなかで「Caed Mile Failte」を情熱的にパフォーマンス。アイリッシュポルカをベースに、酒場の男たちが目に浮かぶような威勢の良いダンスで場内を圧倒するが、アッカンベーやアップップといった歌詞ではリョウガやカイが可愛い顔を見せるギャップも彼ららしい。対照的に「Feel the light」では、暗がりの中でメンバーそれぞれが手にした光の球を操り、幻想的な物語を創造。光と闇の交錯を描いた歌詞の通り、球の光は時に消え、時に灯り、ひたすらに光を求めるダンサーたちは時に激情を露わにしながら想いを乗せて舞う。歪んだパワーボーカルから繊細なハイトーンまで、フェイクも交えて自在に操るツインボーカルに、豪気なステップから揺らめく舞踊へと転換するダンス。「Caed Mile Failte」とはまるで異なる見せ方で今の超特急が持つスキルのふり幅をいかんなく見せつけていくが、最後は壇上に1人立って光へと手を伸ばしたユーキが、ステージ裏へと落下して姿を消すという衝撃的なエンディングに。しかし物語は映像へと続いていき、水中に沈んでいった黒衣のユーキが真っ白な空間で目覚めると、彼を囲んでいたメンバー8人はバラバラに立ち去ってしまう。そして、これこそが物語の始まりであったのだ。
ここから真っ白な衣装に着替えた9人はメインステージにせり上がり、2011年の初ライブでお披露目された超特急の始まりの曲「No More Cry」をドロップ。切なさ漂わせるアッパーチューンで、皆、どことなく厳かなムードを漂わせながら踊り、以降、愛され続けてきた初期のシングル曲が立て続けに登場する。靴音に柱時計が時を告げ、イントロが始まるなり客席が沸いたのは、現体制でのパフォーマンスは今ツアーが初となる「Bloody Night」。ヴァンパイアをモチーフにした2013年の曲に8号車のコールもバッチリだが、タカシのロングトーンは当時に比べて格段の進化を遂げている。マントを羽織ったリョウガが「ずっと…ずっと君だけを」と胸に手を当てつぶやいて大歓声を巻き起こし、「最高の声、聞かせて!」(ユーキ)と「Kiss Me Baby」へ。12年前のリリース時から途切れず8号車の胸を高鳴らせてきた熱いラブソングでも、曲中「Kiss Me Baby!」と超特急のダンスを引っ張るユーキとマサヒロが魅惑の微笑みを浮かべて表す。また、アロハが「ここからは、みなさんと俺たちでイッキを起こしたいと思います」と号令をかけた和風チューン「ikki!!!!!i!!」(2014年)も現体制初披露。センターステージに乗り込み、9人がそれぞれイメージカラーの扇を振れば、アロハとハルは歌舞伎風の所作も見せ、客席中からはhey hey hey hey!と凄まじいコールが返った。さらに「Believe×Believe」(2014年)でもカイの「せーの!」の号令で、曲センターのリョウガを表すガリガリ!の大コールが起こり、9人は白目を剝いて震えるおなじみのビリビリダンスで全力アピール。ポップなモチーフと8号車のコールで超特急の礎を築いてきたナンバーを時系列順に並べて、改めて超特急の歴史を振り返っていく。それは同時に8号車が入れるコールの変化と進化も明らかにして、8号車も超特急と共に成長していること、間違いなく超特急の一員であることを証明していた。
ここで最初のMCが入り、初日の7日はグループ史上最大の会場に「でけぇな!」とカイが漏らせば、タクヤが「ペンライトが綺麗すぎてカメラがわからん!」と幸せな困り事を告白する場面も。また、ツアーファイナルへの気合入れとして、髪色を変えたメンバーも多く、アロハは黒、カイはネイビーに。中でも想定外の赤髪にしたタカシは、オープニングから8号車をどよめかせていた。翌日8日は、まず「8号車の日、おめでとう!」と客席を祝ってから、この景色を活かせないかと時計回りでウエーブを8号車にリクエスト。光が象る美しい円型に「すごい!」「綺麗すぎる!」とメンバーも沸き立つ。また、前日のMCでさいたまスーパーアリーナの略称はたまアリかさいスパか?という議論が勃発していたことを受け、ユーキから「会場の正式略称はさいアリです! 会場のお偉い方が言ってました!」と報告して8号車を驚かせた。ハルの「楽しむ準備できてるか!」という号令でライブに戻り、3組に分かれてのユニットパフォーマンス以降は、超特急の多彩な武器が次々にふるわれていく。まずは、水音とLED上で降りしきる雨から始まったのが「霖雨」。左右のお立ち台で歌うタカシとシューヤの間に、白衣のタクヤと黒衣のユーキがせり上がり、まるで天使と悪魔のように絡みながら、愛しい人を希う切ない物語を、感情豊かに流れるようなダンスで表していく。ちなみにボーカル組もタカシが白、シューヤが黒と衣装の色が分かれており、黒ペアと白ペアで掛け合うように交互に歌い踊る場面も。また、ステージに仰向けになったシーンでは、その体勢のまま通常と変わらぬ声量を響かせるツインボーカルでも観る者の度肝を抜いた。
