2025.06.09 公開
午後6時、まだ陽が完全には落ちきらない時刻。直前までぱらついていた雨は止み、雲の切れ間からは淡い青空がのぞいている。会場に鳴り響くMy Chemical Romance「Welcome to the Black Parade」のボリュームが徐々に上がっていき、すでにスタジアムは昂ぶりの臨界点を超えていた。
曲が終わり、「ドーン!」と鳴り響くドラムを合図に巨大スクリーンからオープニングムービーが流れ出す。荒涼とした砂漠、波立つ海、深い森の奥に現れる都市、東京タワー。カメラはレコーディングスタジオへとズームインしていき、映像のなかで叫ぶ藤原聡(Vo/Pf)が仕切りガラスを突き破ると、リアルタイムの4人の姿へと切り替わる。バックステージの通路を歩き、周りのスタッフとハイタッチしながらステージに向かうメンバーたち。そして藤原が両手の拳を掲げながら実際に現れた瞬間、7万人の大歓声が日産スタジアムを揺らした。
Official髭男dism(C)TAKAHIRO TAKINAMI 画像 3/4
オープニングナンバーは「Same Blue」。TVアニメ『アオのハコ』のオープニング主題歌であるこの曲は、「始まり」にふさわしい疾走感に満ちている。松浦匡希(Drs)が踏み鳴らす四つ打ちキックに合わせ、小笹大輔(Gt)のテレキャスターが軽やかなカッティングを刻み、サビの駆け上がるメロディーを藤原が高らかに歌い上げた。スクリーンに広がる目に痛いほどの青空と、透き通るほど白い入道雲が、この日の空模様すら塗り替えてしまいそうだ。
「日産スタジアムへようこそ。今日は僕たちのツアーファイナルに来てくれてありがとうございます。盛り上がっていくんで最後までよろしく!」そう藤原が叫んで披露したのは「Universe」。映画『ドラえもん のび太の宇宙小戦争 2021』の主題歌でもあるこの曲は、サポートのコーラス隊とホーンセクションを加えたグルーヴィーなアンサンブルが心地よい。藤原はマイク片手に空を仰ぎ、サビのリズミカルなリフレインを歌い上げると、客席からもシンガロングが響き渡った。
2ページ(全5ページ中)
