
そうやってガンガンアッパーに盛り上げながら、その次にパーソナルでダークな「宮」をもってくるという展開もなんともVaundyらしい。その「宮」ではステージに置かれた椅子にもたれかかるように座りながらパフォーマンス。こういう、いわば「仕掛け」みたいな演出も、じつはこれまでのVaundyのライブでは見られなかったものだ。相変わらずステージにはLEDスクリーンなどの映像装置はなし、バンドとVaundyだけでひたすら熱量を上げていくようなステージングはストイックとすらいえるものだが、それだけにこの椅子でのパフォーマンスは印象的だった。印象的ということでは、「黒子」での照明演出もすばらしかった。「黒子」も「宮」と同じようにVaundyの内面を感じさせるような楽曲になっているが、そのサウンドや歌詞と、青いレーザー光線や音とシンクロしたフラッシュライトが織りなすスペクタクルのコントラストが、楽曲の深みをより強調していた。
会場にいる全員がじっくりと聴き入るなか最後のロングトーンも鮮やかに響き渡った「呼吸のように」を終えると、ここで再びのインターバル。『映画ドラえもんのび太の地球交響楽』の主題歌である新曲「タイムパラドックス」が2月28日にCDシングルとしてリリースされること、7月の幕張メッセワンマン2daysがソールドアウトしたことを伝えると、さらにここで今年11月から新たなアリーナツアー「Vaundy one man live ARENA tour 2024-2025」を6都市12公演の規模で開催することを発表すると、場内からは大きな拍手と「うおー!」という歓声が起きた。そしてこの日でツアーが終了するということに触れ、「明日、俺が休みにしてやるよ。それぐらい本気でやろうぜ!」とさらにオーディエンスの興奮を煽り立ててライブは後半戦に突入していった。
「Tokimeki」で始まった後半戦はのっけからものすごい一体感。Vaundyの歌もますます力強く響く。
ホーンの音色も華やかな「花占い」では客席中でオーディエンスの手が揺れ、手拍子が打ち鳴らされる。一気にボルテージが上がってきた客席に向けて「まだまだいくぞ!」と「トドメの一撃 feat.Cory Wong」を投下。花道をフルに活用しながら繰り広げられるVaundyのパフォーマンスが、クライマックスに向けてますます場内を盛り上げていく。バンドメンバーと息を合わせてサイドステップを踏む彼もオーディエンスと同じように楽しそうだ。そして「気付いたら終わっちまってるぜ!」とさらにテンションを上げることを全員に要求しつつ「CHAINSAW BLOOD」に突入。エンジンの起動音を合図に、これぞアンセムというべき圧巻のサウンドが鳴らされる。そこに「見せてやるよ、これが本当のライブだ!」と「逆光-replica-」を畳み掛けるのだから、もちろん客席は最高潮である。メンバーの増えたバンドの演奏もパワーアップ、そのパワーに負けないくらいの歌をVaundyは轟かせる。『replica』で生み出した楽曲の振り幅もさることながら、その演奏と歌の肉体的な進化が、このライブのダイナミックな魅力を生み出している。最初の「ZERO」からそうだったが、今のVaundyのライブはますますフィジカルでエモーショナルなものになってきているのだ。