2024.01.05 公開
何より驚いたのは、ヤガミのドラムが力強く跳ねる「Boogie Woogie」の頃には、いつの間にか涙も引っ込んで、純粋にステージを楽しんでいる自分がいたことだ。
開演した頃は深い悲しみを湛えていたはずのフロアを、ここまで引き上げたバンド力にただただ感服するばかりだった。
そんな空気を一変させて、櫻井の不在を悲しいほど鮮やかに映したのは、昨年8月に逝去したISSAY(DER ZIBET)と櫻井がツインヴォーカルをとる「愛しのロック・スター」から始まった中盤戦。
「愛しのロック・スター」では、スクリーンに在りし日の二人のライブ映像が映ると、耐えきれずすすり泣く声も大きくなった。
続いて今井のオリエンタルなインタールードから始まった「さくら」では、スクリーンと武道館の天井にも浮かんだ桜の花が舞い散る様子が、なんとも美しくて悲しみを倍増させた。
さらに、まるで葬送曲かのように「Lullaby-Ⅲ」「ROMANCE」と、櫻井の耽美な世界観を強く打ち出したナンバーを続けて聴かせた。
今回のステージは、全編にわたり櫻井の映像を映したわけではなく、櫻井を感じるのは歌声のみという楽曲も何曲もあったが、特に終盤は彼の歌う姿がありありと目に浮かぶような楽曲がラインナップされていた。
ラテン調のダンスナンバー「Django!!! -眩惑のジャンゴ-」、両手を広げて空を自由に駆け抜ける「太陽とイカロス」、「Memento mori」では客席をライトで照らす櫻井の映像の動きとリンクするように、実際に客席がライトで照らされた。
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