全国11公演にのぼる春夏ツアーも全公演が完売し、8月8日には9人組の新体制となって1周年を迎えたダンス&ボーカルグループ・超特急のカイ(小笠原海)とリョウガ(船津稜雅)が、初のトークライブ『稜海しました!』を9月17日に大阪、10月14日に東京で開催した。ライブでは最年長として常にMCを引っ張り、9人をまとめる2人のトークが存分に楽しめる貴重な機会だけあって、グランフロント大阪 ナレッジシアターに有楽町朝日ホールと、両会場とも2回公演にもかかわらず、チケットは即日完売。超特急とは違う、この2人ならではのユルい空気感と自由すぎるトーク回しで、リョウガいわくただの悪ふざけなステージを体現し、熾烈なチケット争奪戦を勝ち抜いたファンを笑いと癒しの渦に巻き込んだ。
【写真】初のトークライブ「稜海しました!」を開催した超特急のカイとリョウガ(6枚)
超特急のリーダーとして普段から告知等の重要な場面を任されているリョウガに、彼をサポートしながら全メンバーに気を配って、円滑なトーク運営に尽力しているカイ。しかし、2人だけの空間になれば、結成からの12年で培った互いへの信頼感のもと、すべての気遣いも緊張感も消滅し、レールもルールもNGもなく自由にトークが転がっていくのが稜海の醍醐味である。いわば超特急がオンだとすれば、稜海は完全なオフ。2人の本名から一文字ずつ取って了解と引っ掛けたライブタイトルも笑いの要素が強いが、対照的にキービジュアルではスーツでキメキメの2人のショットを起用するなど、随所にギャップを仕込んでいるのが痛快だ。開演を告げるオープニング映像でも、サングラス片手にボルドーのスーツと革手袋でポーズを決めるクールな2人のあまりのカッコよさに、場内には歓声だけでなく笑いが湧く始末。かと思いきや、ステージに登場した二人はえんじ色のジャージ&軍手姿で、映像内と同じ色味で凄まじいギャップを仕掛けてくる。東京の最終公演では、遂に「映像で笑うな!」(カイ)、「ただただカッコいいだけなのに!」(リョウガ)というお叱りもあったが、そんな笑いが許されるのも稜海ならではだ。
東京公演の1部では、カイいわく「今回のチケット抽選倍率はTWICEと同じ」という激戦だったそうで、「皆さんは選ばれし者なんで」と続けられれば客席から拍手が。「キャパは100分の1」と断りも入れつつ、彼らが所属するSDRでアーティストが歌いも踊りもしないイベントを行うのは今回が初めて――つまり「社を挙げてのイベント」という言葉も、映像やグッズへの気合の入りようを見ればあながち嘘ではないだろう。以降、事前打ち合わせ一切ナシの自由すぎるトークが一発本番で繰り広げられ、「例えば、真剣な打ち合わせのときに今、立ち上がって叫んだらどうなるだろう?とか、絶対しちゃいけないことをやりたくなる」というカイの秘められた破壊衝動が明かされる一幕も。突然「遠征の定義は?」とオーディエンスに問いかけ、1部では上海から来たと答えたファンにリョウガが「ごめんね」と手を合わせたり、2部ではこのイベントのためにタイから来日したというファンに「バカ!」と嘆いたり、とりとめもなくあちらこちらへと軌道を外れるトークが続くこと20分。いきなり「始めていきましょうか!」「ここまではイントロ」と声をあげた2人に、まだ始まってなかったの!?と場内がざわついたのは言うまでもない。
本編が始まって最初のコーナーは、お題に沿ったBest3を2人が独断と偏見で決める『稜海の勝手にBest3』。例えば、東京公演1部の恥ずかしい寝言というお題では「俺、移動中に結構寝言言っちゃうな」というカイに、ファンから「可愛い!」という声があがるや、すかさず「麻痺してるって!」と突っ込むのも小気味いい。考え込むなかで沈黙が続いても、焦りや不安を見せることなく、笑いの漏れる会場の空気を丸ごと受け止めながら「普通はこんなに無言続いちゃダメだから」とセルフ突っ込みしたり、客席で泣き出した子供をなだめようとリョウガが踊りだしたり。何が起きても自然体で対応できる2人の安定感と安心感は鉄壁だ。加えてヤンキーが子猫を拾う的なギャップ萌えBest3では「全身サンリオタトゥー」、「ヤンキーがどう森(どうぶつの森)内でもヤンキー」、「スフィンクスが子猫」といった抱腹絶倒のBest3を捻りだす笑いのセンスも抜群。2部ではコンサート中に身体の一部が動物になるとしたら、どの動物のどこがいい?というトンデモなお題にも真剣に向き合い、「a kind of loveのラスト、首を振るところでキリンの首!」というリョウガのアイディアには拍手喝采が湧いた。