「1999」では、2階席の後方までサイケデリックなレーザービームが貫いた。息のあったドラムのビートと弦のピッキングはズンズンと腹の底に沈み、テクニカルなフレーズはひとつの生き物のように体にのしかかってくる。続く「RA-SE-N」では、感情の海へ一気に引きこんでいく。泣き叫ぶように、憂うように、ぶちまけるように、突き刺すように、RYUICHIは妖しくも哀しいシャウトを響かせる。INORANが「SELVES」でウィスパーボイスを吹きこむと、楽曲もよりメロウな雰囲気へ。SUGIZOの弾くヴァイオリンも甘美なビブラートを唱え、前半パートを締めくくったのだった。
『LUNA SEA DUAL AREANA TOUR 2023 UN ENDING STYLE』
photo by:田辺佳子 上溝恭香 清水義史 画像 4/8
20分間の休憩を経て、真矢のドラムソロからライブは再開。大胆でダイナミックなプレイは華やかながらぶれることがなく、抜群の安定感を魅せつける。その演奏に乗っかるように、ステージ袖からJも登場。「声が聞こえねえな」と言わんばかりに、耳に手を当てるジェスチャーで観客を煽ると、リズムとメロディーで会場を魅了していく。一糸乱れぬセッションは、たった二人だけとは思えぬほど極上の音楽。バンド体制が最高なのは言うまでもないが、このふたりならではの旨味も凄まじい。さらには、この流れに「Déjàvu」を繋げてしまうのだから、本当に粋である。何を隠そう1996年時のライブでも、中間部にはこの繋ぎを用いていたのだ。所々では当時のセットリストを踏襲しながら、今だから見せられるLUNA SEAを彼らは表現しようとしているのだろう。ブライトな照明演出に爆発力のあるガツンとしたサウンド、そしてスカンと抜けていく明るいボーカル。「あなたさえ」と巻き起こるシンガロンは、コロナ前の世界が戻ってきたような感覚を呼び起こさせた。
RYUICHIが「お前らのことを愛してみたいと思います」と告げると、導かれたのは「DESIRE」。SUGIZOとINORANが向き合ってギターをかき鳴らす一幕もあり、そんなふたりをRYUICHIは嬉しそうな表情で眺める。Jが最初期に作曲した伝説のナンバー、「TIME IS DEAD」が投下されるとフロアもここぞとばかりに大盛り上がり。サビのリズムに合わせて突き上げられる拳は、専門的な機関でレッスンでもしてきたのではないかと思うほど揃っていて、ライブの一体感をより一層増していた。「もういっちょ、いくぞ!」という宣言を受け「ROSIER」に繋がれると、オーディエンスも大熱狂。SUGIZOがセンターに立ち伸びやかにソロを響かせると、彼の横でRYUICHIはキラキラと手をひらめかせる。
さらには「スタンドのやつらも! アリーナのやつらも! Kアリーナ全員で飛ばしていくぞ!」と煽りをいれ、最後のパートにパワーを注ぎこんでいった。本編のラストを飾ったのは、刺激的な照明とサウンドで魅せる「HURT」だ。ズシズシとくる音の弾丸で打ちぬき、その凛とした佇まいで魅せていく。想いのたけのステージに刻み付けると、ギターのハウリングがアリーナを埋め尽くすなか、メンバーは舞台から姿を消した。
一瞬で音をぶつっと止める幕引きは、スイッチがパッとオフになり物語が瞬時に終わったような印象を与えたのだった。
本編が終わり程なくすると、アンコールに呼ばれてメンバーは再登場。RYUICHIは、ステージバックのスクリーンに映し出されたアルバム『STYLE』のアートワークを指さしながら「かっこよくない?」と満足そうな表情だ。「IN SILENCE」と曲名をコールすると会場には「ふぅ~!」と歓声が巻き起こりミラーボールがキラキラと輝き始めた。ステップのように弾むクリーントーンのギターに風のように爽やかなアコースティックギター。間違いなく、この日で一番ポップな音が鳴っている。オーディエンスもそれぞれが体を揺らしたり、手を掲げたりして、自由に音を感じているよう。
『LUNA SEA DUAL AREANA TOUR 2023 UN ENDING STYLE』
photo by:田辺佳子 上溝恭香 清水義史 画像 5/8
最後のMCパートでは、メンバーの自己紹介が行われた。観客がそれぞれに呼びかける声も一段と大きくなり、いかに5人がSLAVEから愛されているかということを強く感じさせる。真矢が「じゃあ、一言だけ。お前ら、本当に最高だぞ! 幸せいっぱいのツアーに年末までしたいと思います。みんな、よろしくね」と告げれば、Jは「こんな瞬間2度とこないと思ってました。だけど、年末までみんなで楽しめるね」とメンバーに視線を送ってにんまり。INORANはRYUICHIの元にかけより、RYUICHIにマイクを「どれにしようかな」と選ばせおどけてみせ、SUGIZOは「みんな本当に最高です。Kアリーナ最高です。これから年末まで一緒に、この狂気のLUNA SEAを進化させていきましょう」と未来を見据える。締めを飾ったRYUICHIは、オーディエンスの自分を呼ぶ声を聞きながら、嬉し恥ずかしで口元を緩め、「自分たちの見たいもの、やりたいものを掲げてきたけど、みんなと共にまだまだやれそうだよね。年末まで飛ばしていこうぜ!」と、さらなる飛躍を誓う。「PRESIOUS...」では四方八方から声が湧き出たようなシンガロンが巻き起こり、「WISH」ではイントロ終わりにファンが一体となってジャンプ。SLAVEと共にライブを作りあげたのだった。