ミリオンセラーを記録したシングル「Bye For Now」。この曲は信頼していたスタッフから、夢のために仕事を辞めて海外に旅立つことを告白され、そのスタッフのために制作。「for now」は「今だけは」という意味があり、「永遠の別れではない、夢がかなったらまた会えるさ」とスタッフの背中を後押しする森友の優しさが込められた楽曲である。
この日のライブでは、次々と会場全体が歌えるヒットシングルが惜しげもなく連続披露され、「次は何の曲?」「このイントロは!?」「エ?これ何の曲のイントロ…」と、期待通りだったり、予想以上だったり、ツアー初日にもかかわらず完成度の高いライブに目を離せない空間が展開されていた。
シングルのイントロに忠実な曲、その真逆にピアノのみのシンプルな演奏で披露される曲。そんな曲は一瞬たりとも聴き逃すまいと前のめりになる観客に、森友の優しい歌声が響く。
今、リアルタイムを生きるT-BOLANが90年代の曲をライブする。これからライブを見る人は、期待以上の一夜になると確信してツアーに参加してほしい。リアルの森友は歌えることの喜びを全身で体現し、90年代の歌を、あの時以上に自由に歌い上げる。その歌が僕らの心に深く突き刺さるのだ。
ライブでは、アップテンポの曲を連続して演奏するシーンも多用している。そんな時客席はサビでペンライトを振り、気持ち良さそうに体を揺らす。まるで会場全体が巨大なクラブのように変貌したかのような錯覚に陥った。
スポットライトに照らされた上野が、「My life is My way」のイントロを弾き出す。ベースの上野は2015年3月にくも膜下出血で倒れて生死をさまよった。その後、意識を取り戻し、リハビリに励み、奇跡的にステージに立っている(現在は彼単独で「脳フェス※脳卒中体験者とその周囲に向けた活動」に参加したり、バンド以外も精力的に活動)。そして今、リハビリ中に何度も繰り返し弾いたフレーズを観客の前で披露している。これまでの上野はライブ後半に登場し数曲に参加。だが今回は療養から復帰後、「ライブで全曲ベースを弾く」という目標を自ら達成したのだ。
アンコールでは、鳴り止まぬ拍手と声援に応え再びステージに登場したメンバー。「できる限り、みんなと触れ合いたい」と森友はステージを降りて客席へ。「愛のために 愛の中で」を歌いながら握手や抱擁を交わし、待ちに待ったその一瞬一瞬をファンと自らの胸に刻んでいく。
(この模様は「今日の『愛のために 愛の中で』」として、毎公演後にオフィシャルYouTubeチャンネルにアップ:https://t-bolan.bzone.co.jp/special/singles-ripple-/)
