終盤、とびきり優美な白のドレスに着替えたCoccoが、〝Never ending journey〟を披露する前には、長い長いMCで、実はこの曲がリハーサルの時から思うように歌えていないと語り出し、「考えがまとまらない時って、(思いを)口にしたらわかってくること、あるでしょ?」と、この歌がうまく歌えない理由を、その場で考え始める。
どんな歌もどんなフレーズも、適当に流すことなどしないCoccoらしい場面だった。曲ができた当時の思い出を振り返るうちに、「その頃の自分は、みんながCoccoの歌で救われたとか元気になったって言ってくれるから、自分の歌に力があるって思っちゃってた」と語り、「でも、歌に救われたって思ってくれるのは、それを拾い上げる人の力があったからなんだと思う」と、自分の考えを不器用に整理していくように、涙で顔をくしゃくしゃにしながら語り続ける。
そして、「何かのためだとか、誰かのためだとか、恩着せがましいことじゃない、ただ歌えばいいんだね」と結び、「立ち会ってくれてありがとう」と何度も何度も感謝の気持ちを言葉にした。その後の〝Never ending journey〟が感動的だったのは言うまでもない。Coccoが全身で歌を歌う。今はもうそれだけでいい。その迷いのなさが頼もしく、そして私たちはそんなCoccoにまた癒されるのだ。
ラストは〝有終の美〟。小さな紙飛行機が舞うように、ハート形の大きな紙吹雪が会場中に降ってくる。そのハートに手を伸ばしながら、Coccoの力強くしなやかな歌声に包まれるエンディングは、これまでに感じたことのない幸福感に満ちていた。
スペシャルなライブを無事に駆け抜けた安堵感と、今日ここでしか出会えなかった「歌」への気持ちとが、Coccoの笑顔に溢れていた。
名残惜しそうに、会場中の一人ひとりに手を振るようにして、ステージを去ったCocco。裸足の歌姫が「歌うこと」に素直に向き合った今、次にまた届けてくれる歌を楽しみに待ちたいと思う。
(Text: 杉浦美恵)
