MCでは「今回、声出し解禁だぜ! 声枯らさずに帰るなんて奴いねーよな!」というジャンの煽りに返る大歓声に、田中洸希は「ヤバい! 泣ける!」と動揺しきり。その後の自己紹介も皆テンション高く、『Persona』というライブタイトルの考案者である飯島颯は上手から下手まで走って、早くも客席をウエーブさせる。志村玲於も「今日、ついに僕の夢が叶う!」とコール&レスポンスをせがみ、ジャンは「数年ぶりにやっとこれができるよ!」とジャジャジャジャンを大合唱。柴崎楽は「次、作る料理はハンバーグかオムライス、どっちがいい?」と問うたり、やたらとBLUEに声を出させたがるのが微笑ましい。
そして「ヤバいライブになるんで、呼吸忘れて死なないように」という松村の宣言通り、以降はSUPER★DRAGONというグループと個々のメンバーが結成以来の7年で身につけてきた武器が、次々と誇示されていくことに。「Hey, girl」ではバーカウンターやソファなど、歌詞の物語をなぞったクラブ風のセットでグラスを傾けながらカメラにアピールしてBLUEを悩殺。「Indelible Magic」ではミラーボールの光を浴び、別れに残る希望の光をシンクロ率の高いダンスで表したりと、連続リリースで培った艶やかな大人のムードを発揮していく。一転、過去のCDジャケットが巻き戻っていく映像に続いて「久々だな、楽しもうぜ」(ジャン)と初期曲「HACK MY CHOICE」がドロップされれば、客席からは待ってましたとばかりにハイ! ハイ!の掛け声が。続いて、グループ内の年下組ユニット・サンダードラゴンの「リマカブロ」でもせーの!と声が湧き、嬉しそうな笑顔を浮かべる5人の姿に今日この場所で出会えたYeah!の歌詞が胸に滲みる。メンバーの背を乗り越える柴崎のアクションも、身長が大きく伸びたぶんダイナミズムを増して、年長組ユニット・ファイヤードラゴンのミドルバラード「MIKAZUKI」のしっとり加減も年齢を経たぶん濃密なものに。曲が始まるたびに歓声が湧いた初期曲のメドレーは、3つの顔を持つ彼らの本質を表すものであると同時に、BLUEへのプレゼントでもあったに違いない。
しかし、サプライズはここからが本番。暗転したステージの2階に姿を見せた伊藤壮吾が胸元の黒ネクタイを緩め、5歳の頃から習ってきたピアノを7年ぶりにステージで演奏し始めるや、場内には悲鳴にも似た歓声が。そして一音一音力強く爪弾かれる旋律が「Remedy For Love」のものになると、トラスの中に池田、そして古川が現れ、伊藤のピアノを伴奏にエモーショナルに歌いあげるという端整な情景に、BLUEは息を呑んで釘付けになる。さらに、白のオーバーシャツで登場した志村、飯島、柴崎が、オーガンジーの布をたなびかせて裸足のままコンテンポラリーな舞いを披露すれば、田中はサンプラーを用いてのボイスパーカッションでHands Up!と場内をアジテート。彼が産み落とすトラックを受け、今度は松村とジャンが尖ったオリジナルラップで欺瞞にまみれた社会を切り裂き、そのままなだれ込んだ「Don't Turn It Down」でも、田中の有声スクラッチに3ラッパーによるユニゾンが、カラフルな衣装と相まってワイルドな魅力を全開にする。メンバー個々の豊かなスキルと、そこから生まれる多彩な世界観は実に魅惑的だが、やはりスパドラ最大の武器は9人一体となってのグループ力とBLUEとの絆。「Pioneer (Keep It Real)」ではメロウなボーカルと挑発的なラップ、ボディコントロールの利いたダンスがステージのあちこちで入れ代わり立ち代わり繰り広げられてBLUEの目を奪い、イントロが鳴るなり湧く大歓声のなか「Mr. GAME」へとリレーして、スパドラ特有の巧みな躍動感で圧倒する。そしてアルバム新曲の「Pretty Girl」ではBLUEと共にクラップし、「より一体になりたい」と飯島が考案した振り付けを共に踊って、歌詞にもある忘れられない1日にしようという想いを会場の全員で共有。その直後のMCで飯島は「反応があると楽しすぎる」と語っていたが、その楽しさはメンバーとBLUE双方のパワーとなり、ライブをより熱いものにしていった。
「まだ、いろんな仕掛けが待っています」という古川の言葉通り、趣向を凝らしたラブソング3連発では、未体験のジャンルに挑戦した連続リリースで深みを増したスパドラワールドをお披露目。雑踏と雨の音から始まったアルバム新曲の「相合傘」では煙る照明のなか、空模様の移り変わりに男女の関係性をなぞった物語を、ピンクの傘を片手にさりげない動きで小粋に演じていく。中でも、普段はラップを担当するジャンのボーカルはこれまでになく甘く、またしても新たなポテンシャルを感じざるを得ない。続く「Honey Baby」ではステージ左右に張られた紗幕の狭間をメンバーが代わる代わる行き来して、紗幕越しのシルエットと、幕の裏でカメラに迫るメンバー映像という二段構えで魅了。「Not Enough」でもセクシーなアクションがゆったりとしたグルーブに映え、ついには衣装をたくし上げて素肌をさらし、BLUEを悶絶させる。そして、このブロックの結末を告げたのは、それぞれの旅立ちを歌う切ない別れの曲「-Tweedia-」。「相合傘」で始まった偶然の出会いから、一連の流れで聞くと一つのストーリーが浮かび上がり、感情移入のあまりメンバーも目を潤ませて、感極まった古川が声を詰まらせたシーンもあったほどだ。
