メインステージに戻り、ピアノインストから滑らかに始まった「あの太陽が、この世界を照らし続けるように。 」は圧巻だった。 後のMCで小渕が語った言葉によれば、「この歌詞をもっと届けるアレンジをしてみたい」という黒田の想いを発端に、試行錯誤の末にできあがった形なのだという。 ピアノに乗せて小渕が吹くブルースハープに続き、雄叫びのような絶唱を響かせた黒田。 曲が終わると小渕は目に涙を光らせて黒田を讃え、観客はスタンディングオベーションを送った。 2人はハイタッチを交わすと、小渕は「今、この拍手が世界中に響いてるかもしれない。 こんな歌を歌える人いますか?」と黒田を絶賛。 黒田は力を出し切って放心したかのような表情を浮かべ、深々と頭を下げた。 小渕はこの曲について「太陽は命、世界中の命は太陽なのかな?と思って書いた歌」だと解説。 「海を渡って、ある国では大きな争いがあり、地下に潜って家族とうずくまって、外に出ることなんて絶対に許されない……燦燦と照る太陽があるのに、それを観るのが怖いという、幼い子どもたちがいるんですよね。 昔の話じゃなくて、今、今日も」と世界情勢に思いを馳せた。 「いつかその子たちが地上に上がって、元気に太陽の下でまた遊べる日が来るように」(小渕)という願いを込めた情熱的なパフォーマンスに、いつまでも拍手が鳴り止まなかった。
「Days」では、終盤<Glory Days>と二人で声を重ね、歌唱する場面に胸が熱くなった。思い通りに行かない苦しい日々を無かったことにせず、「その時を乗り越えた自分が、未来の自分を助けてくれる、背中を押してくれる」というイメージを、小渕はここでも繰り返し語っていた。印象深かったのは、「この時代を一緒に皆と過ごしました。僕らもこうしてまた大きなライブをさせてもらえるようになりました」(小渕)と語り、混迷の時代を生き抜く同志としてファンやスタッフを表現したこと。「皆の心に届くライブをつくろうと待っていた。皆が待っていてくれた……これだけで幸せです。ありがとう!」と涙を浮かべていた。
ライブは終盤を迎え、「そろそろガツッと盛り上がっていく?」(小渕)と煽って、鋭いギター・カッティングから「神風」へ。パワフルなロックナンバーで会場を沸かせた。続いては、大阪・関西万博オフィシャルテーマソング「この地球(ほし)の続きを」を披露。<こんにちは>という歌詞に合わせた手の振りをオーディエンスと共に行ない、声出しNGの状況下ではあったが、コール&レスポンスに代わるコミュニケーションを図った。黒田の「小渕!」コールで、法被姿の小渕が和太鼓を強打するダイナミックな見せ場も。エネルギーに満ちた空気感の中で本編を終えた。
アンコールで2人が再登場すると、「僕ら今年(2022年)で結成24年、来年(2023年)で25周年を迎えます」と小渕が語り始めた。 テーマソングを手掛けた2025年の万博では、世界中から人々が訪れることから、黒田の歌が「いつか世界中の人に聴いてほしいと思っているんですけど、本当に夢が叶いそうです!」と満面の笑み。 黒田は深く礼をし、観客は2人に大拍手を送った。 今回のツアーは、懐かしい曲たちも盛り込みながら「でも、一番新しいコブクロで、『カッコいいな』と思ってもらいたくて」(小渕)との想いでつくり上げたのだという。 「今日が絶対一番いい。 そして、明日になったら明日が一番いいと思える日々を送れるようなテーマソングをこれからもバンバン書いていくので、いつも隣に置いてください。 これからも応援よろしく!」と呼び掛け、2人は揃って深々と頭を下げた。 最後の曲は、22年前に初めて東京でレコーディングした、記念すべきメジャーデビューシングル「YELL~エール~」。 2人を温かく包み込むようなファンのクラップに乗せてギターを奏で、歌い始め、やがてバンドが加わって豊潤なアンサンブルが編み上げられていった。 2人きりで始まったコブクロに様々な音、人が加わり大きくなっていく――曲の構成が、2人の物語の写し絵のようになっていた。
いわゆる代表曲を連打するようなベスト盤的メニューとは一味違った、コブクロの最新形を提示しようとする強い意志が伝わってくるセットリスト。彼らの今を感じ取ることができ、25周年に向けた次なるアクションが楽しみになるツアーファイナル。貴重なライブを是非、WOWOWプラスでチェックしてみてほしい。
文=大前多恵
■放送番組情報
コブクロ「KOBUKURO LIVE TOUR 2022 GLORY DAYS」
2023年2月26日(日)21:00
収録日:2022年12月11日/収録場所:マリンメッセ福岡
https://www.wowowplus.jp/program/episode.php?prg_cd=CIIDM22086
