7人揃ってのタフでパワフルなダンストラックで場内を圧倒してからは、「今から僕たちとラブラブダンスを踊っていきましょう!」(桜木)と、大倉を中心にダンス講座を開いて「ギミギミラブ」へ。腕を大きく使ってハートを作るダンスとジャンプでメンバーと観測者が互いに愛を伝え合うと、「まだまだ俺たちと一緒に遊ぼうぜ!」(吉澤)となだれ込んだ「嗜好に関する世論調査」では2択”と繰り返す歌詞にちなみ、なんと次に披露する曲をメンバーが2択で決定することになる。「Macanas.」に「Show Time!!」と、原因は自分にある。の前身・BATTLE STREET時代の懐かしの曲をめぐって互いにアピール合戦しつつ、なぜか長野と吉澤が抱きしめ合うカオスのなか、選ばれたのは「Show Time!!」。デジタリックでストレートなダンスナンバーは今の彼らとは一味違う旨味があり、この日だけのスペシャル感を引き立てて、客席を大いに沸かせた。結果「もっと盛り上がっていこうぜ!」(桜木)と続いたエレクトロスイング曲「Joy to the world」との対比は、よりいっそう際立つものに。そのヒネりの利いた中毒性と一筋縄でいかなさに濃厚なげんじぶらしさ”を感じて、思わずニヤリとさせられてしまうのだ。
さらに2分にわたる勇壮なイントロからステージが割れ、ファイヤーボールと音玉が打ち上がるなか前に進み出た7人が叩きつけたのは、げんじぶ史上例を見ないハードロックチューン「Lion」。ロック好きの武藤を中心にエモーショナルなボーカルを放ち、暗色のレザーとスタッズを基調にした衣装の印象も相まって、これまで見たことのなかった彼らの熱い”感情があふれ出していく。ロックギターが暴れる「黄昏よりも早く疾走れ」でもモニター上を疾走するハイウェイと歌詞をバックに前へと進み、あたおか”等の流行り言葉も交えたプログレッシブなジャズロック「以呂波 feat. fox capture plan」からの4つ打ちダンスチューン「0to1の幻想」では、大倉が「暴れろ!」と吠える一幕も。シニカルな表情を見せる楽曲が多い彼らゆえ、感情を剥き出しにする様は衝撃的だが、それがしっくりハマッているあたりに急速な成長ぶりを痛感させられる。
原因は自分にある。(photo by カメラマン:米山三郎、冨田望) 画像 5/9
メドレー以降40分以上にわたりノンストップで展開したのちのMCでは、ソロパートの秘話も。それぞれ小道具が一つずつ与えられており、吉澤が「ライブでサングラスかけることなんて、一生で今日が最後なんじゃないかと……俺、サングラス似合ってた?」と問いかけると、客席からYESの拍手が返る。杢代のキメ台詞は本人の発案とのことで、薔薇を口に咥えることを当日に決めたという桜木は「(自分の前の)和人が絶対盛り上がっちゃうから、インパクト与えようと頑張りましたね!」と力を込めた。また、桜木からはステージが広くなったことで、ようやく「以呂波」で本来のジャンプができたという報告も。彼らの楽曲は世界観が濃密なぶん、会場が大きくなるほど力を発揮できるのだ。
原因は自分にある。(photo by カメラマン:米山三郎、冨田望) 画像 6/9
そんな未来への希望を膨らませつつ「げんじぶのNext phase、僕たちの羅針盤となるこの楽曲をお聞きください」という武藤の言葉から始まったのは、アルバムのリード曲「無限シニシズム」。LEDモニターに浮かぶ時計が無限の時を刻むなか、限られた命を持つ人間の煮詰まっていくような生き様を、その声と身体で時にステージに身を横たえながら表す7人のパフォーマンスは実に生々しく、上向いた顔を抑える印象的な仕草からも声なき声が伝わってくる。サビの長野と大倉のハイトーン、終盤の大倉と吉澤によるラップの掛け合いも圧巻で、現代の世情を難解な婉曲表現で現した「柘榴」といい、ほろ苦い空気感でげんじぶらしさ”をしっかりと描写。だが、そこから純度100%のラブソング「シェイクスピアに学ぶ恋愛定理」に一転するギャップも、そこで浮かべる甘い笑顔も、すべてがげんじぶらしさ”と言えてしまうのが今の彼らの強さ。「ステージに立ち続けること、みんなのことが好きなこと、そんな原因は……君にもある!」と長野が呼びかけた「原因は君にもある。」では満場のクラップが湧き、流麗なピアノと畳みかけるようなビートに乗せ、機敏な動きで繰り出される目くるめくパフォーマンスから目が離せない。デビュー曲のアンサーソングとして作られた本作で僕がここにいるのは”という歌詞に続き、杢代が明らかに観測者、君たちのせいだ”と歌い替えたのは、始動以来7人を支え、応援してきた観測者たちの大きな愛の賜物。大倉もあふれる想いのまま「観測者大好きだ!」と叫んで、場内の盛り上がりは最高潮を迎える。生きる中で観測者と共に悩み、それでも前を向き、愛を届けていくこと――つまりは、それこそがげんじぶらしさ”なのだ。
原因は自分にある。(photo by カメラマン:米山三郎、冨田望) 画像 7/9
最新バラード「Run away」では7分割されたLEDモニターに星空と歌うメンバーの姿、そして今までのオフショットが映し出され、メンバー同士、はたまた観測者との離れたくない想い”を歌唱。1人ずつフレーズをサビまで歌いつなぐ初の構成は、それぞれの歌唱力の向上を表し、それは彼らのメッセージをよりまっすぐ正確に観測者へと届けていく。逆光を浴びて7人が披露した本編ラスト曲「Q」でも、高速で紡がれる葛藤まみれのリリックが訴えるのは正しいかじゃなくて 信じるかなんだ”ということ。曲を終え、武藤が告げた「僕たちの未来、一緒に歩んでいきましょう」という想いは、光を掴もうと手を伸ばした大倉を筆頭に、メリハリの利いたダンスからもしっかりと伝わってきた。
