今回のコンセプトをプロデュースしているYURAサマは、歌詞の一文をDAISHIの台詞に引用したり、「もう一度、くちづけを」から「KISS OF DEATH」と続け、くちづけとKISSというワードで関連づけたりと、細かなこだわりを随所に入れ込んでいる。雨が降りやまない世界を舞台にした、このコンセプトが始まってからは、お芝居は入れず、本編はあくまで演奏に徹するライヴだ。それでいて、気づいた人にはさらに楽しめる仕掛けを仕込んでいるところがPsycho le Cémuたるゆえんだ。この二日間のライヴは、配信のアーカイブを年内いっぱい(23日は30日まで)観られるので、繰り返し観てじっくり謎解きをするのも一興だろう。
「少年の右目」と題された23日だけに演奏されたのは、「漆黒のゲルニカ」や「Revenger-暗闇の復讐者-」といったハードな曲調や、「哀の雨」といったシリアスなナンバー。そんなセットリストのせいもあってか、ロックバンドとしてのカッコよさが際立つようにも感じられた。特にAYAがプレイに集中する姿には目を奪われ、そこから放たれるプレイの説得力も強く感じられた。またYURAサマの力の入ったドラミングやプレイ中の真剣な眼差しも印象深い。ツアーですっかり曲は体に入っているだろうが、それをこの瞬間、高い集中力でもって表現するミュージシャンとしての魅力を存分に味わえたDay1だった。
そして翌24日。クリスマスイブで渋谷の街もにぎわいを見せる中、このツアーすべてのライヴ同様、新曲「君がいる世界」で「Day2 少女の左目」がスタート。ライヴで新曲を披露するという試みを続けている彼ら。この曲も、ツアー初日の一曲目を飾るというチャレンジから、ツアーを経てしっかり育っている。
「未来少年×未来少女」「Song for…」「愛の唄」といった曲を盛り込み、昨日よりもポップで明るい印象を残す。やさしさや希望といったイメージなのだろうか。その中でも、Lidaがアコースティックギターを優しく奏でた「この星に願いを...」は、繊細でありながらぬくもりを届けてくれた。DAISHIの歌声からは存在感だけでなく温度まで感じられるよう。ファンが腕を左右に大きく振ってフロアをサイリウムが彩り、曲の世界をメンバーとファンが一緒になって作り上げているさまも美しかった。
もちろん「LAST EMOTION」など激しいノリを展開する曲では会場を熱気が包み込み、フロアがヘドバンに埋め尽くされるシーンもあり、息つく暇も与えないほど充実したライヴとなった。そんな全力投球の本編の後、アンコールの一曲目は、クリスマスイブにぴったりな「祈り」。クリスマスに愛を誓う曲で、会場はすっかりロマンチックな雰囲気に。忘れられない特別な一夜になったことだろう。
すっかりリラックスした様子でMCに興じた後、「命のファンファーレ」が鳴り響く。タイトルそのままに、生命の輝きや生きることの喜びが音になり、歌になり、会場中の空気を満たした。幸福感という言葉では足りない、爆発するような歓喜、今にも大声で叫び出したいようなそんな感情がいっぱいだ。seekが口づさみながらもあふれ出しそうな感情をこらえ、メンバー同士、視線を交わし肩を寄せ合う。ステージも会場も、ただただ光に満ちて、輝きを放っているようだった。
