スクリーンにはどこか懐かしさを感じる平原や稲穂が映し出され、ステージにはアコースティック・ギターを抱えた矢萩と武沢が美しい調べをつま弾く。本公演で唯一のインストゥルメンタル・ナンバー「夕暮れ(1986)」。この演奏が前半と後半のブリッジとなり、熱くなった客席をクールダウンさせてくれる。そして4人のホーン・セクションが静かにイントロを奏で、舞台には再び玉置が登場。ピアノをバックに広い会場の隅々まで響き渡るよう「あなたに(1984)」を朗々と歌い上げる。この曲がイントロダクションになって、そのまま「悲しみにさよなら(1985)」になだれ込んだ。客席は再び総立ち。サビではオーディエンス全員が両腕をゆっくりと左右に振り、心の中で歌う。
そしてスクリーンには、この日病気療養中のため参加できなかったドラマーの田中裕二が映し出された。客席の驚きと喜びの歓声がマスク越しから伝わってくる。田中の声でカウントが入り、華やかな祝祭ナンバー「情熱(1990)」が始まった。この曲でドラムを叩いている田中の音と映像に合わせ、メンバーも豪快な演奏をぶちかます。田中がドラム・ソロを披露すると、安全地帯の4人がスクリーンの前に横一線に並ぶ。時空を超えた奇跡の共演に観客も大喜び。最後は玉置が『安全地帯ドラムス、田中裕二!』と送り出す。興奮さめやらぬ客席へさらにたたみ込まれたのは「真夜中すぎの恋(1984)」。途中、2人のドラマーとパーカッショニストの3人によるソロまわしからのアンサンブル、矢萩のギターと玉置のヴォーカルのインプロビゼーションの掛け合いと見どころ聴きどころ満載だ。
このコンサートで安全地帯の4人をサポートするのは、ツイン・ドラムにツイン・キーボード、パーカッション、ギター、4人のホーン・セクションにアマゾンズ3人のコーラス隊。この大編成バンドがもっとも真価を発揮したのは安全地帯史上、最強・最厚のダンサブルなファンク・ナンバー「じれったい(1987)」だ。超弩級のサウンドを爆発させ、そこに真っ正面から対峙する玉置浩二の圧倒的な声量。とめどなく溢れ出す音の洪水に客席のボルテージも最高潮となる。さらにサポートメンバーが代わる代わるソロプレイを披露し、4ビートへのリズムチェンジでは六土のベースが冴える。さながらエクステンド・ミックスを聴いているような迫力だ。
この日演奏された楽曲は「蒼いバラ」を除いて、デビューからのおよそ10年間に発表された楽曲ばかり。古参のファンにとっては堪らない選曲だ。そして本編最後に演奏したのは「ひとりぼっちのエール(1993)」。最後の『La La La...』のコーラスに入ると、観客が携帯電話のライトを点灯させ左右にゆっくりと振る。場内至るところに点った光景は壮観。玉置も右腕を正面に掲げて応じ、感動的なエンディングとなった。
安全地帯(※提供写真) 画像 5/5
アンコールは鉄板ナンバーの「I Love You からはじめよう(1986)」。イントロが始まると同時にステージの左右からゴールドとシルバーの紙テープが客席に向けて発射。玉置が右腕の拳を振り上げ力強く歌うと、オーディエンスも右腕を上げて応じる。ステージと客席が完全に一体化したことを祝うように、天井からはハート型の紙飛行機が舞い落ちる。最後は安全地帯の4人が横一線に並んで、バンドの象徴である「V」サインを掲げ、安全地帯40周年記念コンサートの幕が閉じられた。終演後はオープニングに演奏した「あの頃へ」のメロディーが会場に流れ、集まってくれた観客を送り出した。
