2022.11.29 公開
坂本真綾、1年8カ月ぶりとなる再始動ライブを開催

坂本真綾(※提供写真)  画像 1/8

11月26日と27日の2日間にわたり、東京国際フォーラム ホールAにて「坂本真綾LIVE 2022un_mute」が開催された。un_mute(アンミュート)=「ミュート(無音)を解除する」という意味が込められた今回のライブは、昨年3月に行われた25周年記念ライブから約1年8ヶ月ぶり、そして自身が出産を経ての再始動ライブでもあった。このレポートでは1日目の模様をお届けする。

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坂本真綾、1年8カ月ぶりとなる再始動ライブを開催坂本真綾(※提供写真)  画像 2/8

黒で統一した衣装がスタイリッシュなバンドのメンバーと、ブルーグリーンが美しいドレス姿の坂本真綾がステージに登場すると、まず最初に演奏されたのは今年の5月にリリースされたシングル曲「菫」だった。イントロの鍵盤の音色が情緒豊かなこの曲は、彼女が車の中から横断歩道を人が通り過ぎる光景を眺めながら、色んな人の色んな人生に想いを馳せながら書いたという。新しい扉をゆっくりと開くように、ひとつひとつの言葉を丁寧に発しながら歌う姿が印象的なオープニングだった。

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続く「言葉にできない」も同じく最新シングルの収録曲で、ストリングスの美しいアレンジが映えるアンサンブルと坂本の軽やかで麗しい歌声が心地良い空間を生み出していく。ちなみに今回のバンドメンバーは、河野伸(Piano & Band master)、佐野康夫(Drums)、大神田智彦(Bass)、設楽博臣(Guitar)、外園一馬(Guitar)、金原千恵子(Violin)、笠原あやの(Cello)、稲泉りん(Chorus)、高橋あず美(Chorus)という豪華な編成。ストリングスも入った編成だからこそ演奏したい曲もあると事前に話していた。

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彼女自身も大きな節目を迎えてのリリースとなった新曲たちで始まった今回のライブ。「コロナ禍ではライブやミュージカルを開催しても、客席は隣の人と1席空けた状態だったので、満席の会場でライブができるのは約3年ぶり」と目の前の光景に喜びながら「私の再始動を楽しみに待ってくださっていた方がこんなにいて嬉しいです!」と挨拶すると大きな拍手が沸き起こった。

 

まだリハーサルが始まる前にインタビューをする機会があったが「今回のライブでは私が今歌いたい曲を歌う」と語っていた。ライブを観ながら、それは「今、新しい1歩を踏み出すにあたって歌わなければいけない曲を歌う」という意味だったんだと感じた。「2009年に作った曲を何曲か聴いていただきました」というMCもあったが、その年にリリースしたアルバム『かぜよみ』の中から今回は3曲目に「SONIC BOOM」が披露され、その後も「雨が降る」「Remedy」「カザミドリ」の4曲が、セットリスト入りしている。これまでにオリジナルアルバム10枚、コンセプトアルバム4枚をリリースしてきた彼女にとって、この偏り方は珍しいかもしれない。当時のアルバム取材で「『カザミドリ』は本当に自分の言葉と自分の声で歌う意味がはっきりしている曲」と語っていたし、「Remedy」は自身の心の傷にも触れながら〈私をもっと信じてあげたい〉と曝け出すような歌。「このアルバムが出来た時、『カザミドリ』と『Remedy』を歌うために私は生まれてきたってスタッフに言ったくらい(笑)」というほど彼女が音楽と真摯に向き合うことで、これまでにない幸福感を味わった作品、それが『かぜよみ』だったのである。かつて感じたそんな喜びや、歌う意味、これからに向けた闘志をひとつひとつ拾い集めるようにして、この日の彼女はステージに立っていた。それはとてもエモーショナルで観客の心を打つものだった。

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