2011年12月25日という同じ時、同じステージで誕生した超特急とDISH//。以来、同じEBiDANに属する仲間として、そしてライバルとして常に切磋琢磨してきた2組が、10周年記念のスペシャルツーマンライブ『10th Anniversary Special Live「超特急×DISH//」』を12月25日に大阪城ホールで開催した。初期は合同リリースツアーで全国を回ったり、冠バラエティ番組『超×D』に出演するなど、苦楽を共にしてきた彼らは、まさに盟友と呼べる間柄。そんな彼らが10周年の記念日に相まみえるということで、会場には多くの8号車(超特急ファンの呼称)とスラッシャー(DISH//ファンの呼称)が集い、昔、彼らが交わした夢が叶った日を共に祝った。
【写真】大阪城ホールにて結成10周年を祝うスペシャルライブを開催した超特急・DISH//(11枚)
年に一度の『EBiDAN THE LIVE』では毎年共演しているものの、超特急とDISH//としてのツーマンは約8年ぶり。当時から「お互いにもっと大きくなって、いつか大きなステージでまたツーマンしよう」と誓っていたというだけあって、客席を埋め尽くすカラフルなペンライトの動きからも、期待と喜びが伝わってくるように感じられる。
まずは発車ベルが鳴って、ステージ上のターンテーブルが回転すると、先攻の超特急が登場。「10周年だぜ! 楽しんでいこうか」(タクヤ)と気合を入れる5人のシックな出で立ちに、いつものメンバーカラーはなく、そんなところからも今日という日の特別感が伝わってくる。もちろん特別なのはビジュアルだけではなく、この日の彼らは、楽曲ジャンルと場の空気が目まぐるしく入れ替わる情緒不安定な個性が全開。全力で体を振る「SAY NO」を頭からブチかまし、曲中で超特急!DISH//!進め!とコールすれば、ヘドバンに加えてリーダーのリョウガが変顔を炸裂させる「超えてアバンチュール」と鉄板曲を連ねて、まずは彼ららしいトリッキーな世界観を爆発させる。史上初のダンサー4人によるパフォーマンス曲「Добрый день(ドーブリジェン)」でも、ロシアンハードベース曲らしく赤・青・白とロシア国旗と同色のライトが点滅するなかで、曲頭のヤンキー座りからアウトサイダーなオーラを放出し、ステージ前面には大量の火花がスパーク。これまでになくアブない魅力で客席の心を鷲掴むが、曲終盤、突如現れたタカシはコミカルなサビのダンスを真顔で繰り出して、一転、シュールな情景を作り出す。かと思いきや、次の瞬間には「Dance Dance Dancing!」のスタイリッシュなグルーヴで、ダンス&ボーカルグループならではのカッコよさを見せつけるのだから、まさに感情は迷子状態だ。
ここで「今日は12月25日、僕たちとDISH//が10歳になった記念すべき日ということで、超特急の初めての曲を披露したいと思います」とカイが前置いて届けたのは、10年前の結成ライブでお披露目された「No More Cry」。10年での成長を証明するかのようにメリハリの利いたダンスは、スレイベルの音を加えたクリスマスアレンジと相まって、観ているだけでなんともゴージャスな感覚に。続いて「DISH//からのリクエストソングです」というタクヤの言葉が客席のざわめきを招いた「refrain」では、ストーリー感のあるダンスと、タカシの真っ直ぐな歌声に柔軟なフェイクが情感豊かに響き渡って、寂しいのに温かいという相反した感情をオーディエンスに抱かせる。薄煙のなか、高音域ボーカルと滑らかなダンスで、届かない想いを贈った大人のR&Bチューン「You Don’t Care」といい、それぞれに異なる音楽ジャンルと表情で別れの切なさを描写する姿は一級のエンターテイナーだが、そのエンタメ心がおかしな方向に振り切れてしまうのも超特急らしいところ。突如8年以上前にDISH//の橘柊生がSNSに掲載し、当時8号車を騒然とさせたタカシの変顔画像がステージ上のLEDモニターに映し出され、許可なくこんな写真を晒されたタカシは、なんて可哀想なんだ! 諸君! 我々は怒っている! 激おこだ!と、歌詞を借用して「激おこスティックファイナリアリティぷんぷんドリームわ~るど」に突入する。指を鬼のツノに見立てた可愛い振り付けに、キャラが無限に分裂してゆくタカシの声音は、グループ史上最速BPMに乗って早口でまくし立てられ、最後にはモニターに超ドアップでタカシのリアルタイムの変顔が! 長年、封印されてきた画像と、これまで守られてきたタカシの最新変顔の解禁に、オーディエンスもマスクの下で沸き返る。
しかしジェットコースターのような展開は、ここで終わらず。これ以上ないカオスを極めたところで、常に8号車と自身にエールを贈ってきた「fanfare」を、「超特急、DISH//が10周年を迎えられたのは、ここにいる皆さんがいるからです!」と感動的に投下するのだから、そのテンションの高低差には三半規管もやられてしまいそうだ。ダメ押しとばかり「最後の曲は超特急の節目だったり、大切なポイントで披露する曲です」とリョウガが伝え、2018年1月の大阪城ホール公演以来、一度もライブ披露されることのなかった「Signal」のタイトルを告げたとたん、客席の8号車からは声にならない悲鳴が。夢は見るよりつかみとれrailは自分で選ぶからたどり着くまで諦めるな――この曲のリリースから7年、きっと彼ら自身の背中を押してきただろう歌詞を今になって聞くと、まさしく諦めなかった結果が今日のステージなのだと思い知る。そんな歌詞の一つひとつを噛みしめながら、動きの一つひとつにまで想いを込めて踊る彼らの顏には、新たな決意が。彼らの進むべきレールは、まだまだ先へと続いているのだ。