もちろんハロウィンならではのスペシャルな演出も随所に盛り込まれ、オーディエンスを魅了する。なかでも特筆すべきは「VAMPIRE'S LOVE」での美しいキスシーンだろう。ステージ中央に置かれた棺桶と、そのなかに真紅の薔薇に囲まれて眠る金髪の美少女・手越。流麗なピアノソロに導かれるようにHYDEは少女の頬に手を添え、そっと口づけた。まるで映画のワンシーンのようなその一幕に、一斉に沸くオーディエンス。おそらく鳴り物の音量はこの日最高をマークしたに違いない。のちのMCではこのキスを振り返り、「祐也ファンに言っとくと、柔らかかったよ。しかも、あったかかった」とHYDEが明かすと「ほんとドキドキする。できることなら目を開けていたかった」と手越も本音を口にする、微笑ましいやり取りも。
「20th Orchestra Concert HYDE 黑ミサ 2021 Halloween」の様子 Photo by 田中和子 画像 7/12
さらに後半戦では、これまた『黒執事』のセバスチャン(スクリーンの字幕では『セバスダイゴチャン)と紹介)に扮したDAIGOが登場してHYDEと一緒に「flower」で声を重ね、続く「HONEY」では美少女からヴァンパイアへと姿を替えた手越も参入して3人で歌い上げるという、まさに夢のようなコラボレーションも実現。かねてよりHYDEファン、L'Arc〜en〜Cielファンを公言している手越はステージでは初となる共演に興奮覚めやらぬ様子で「カラオケとかで死ぬほど歌ってきた、そして普通にライヴで観ていた「HONEY」をここで一緒に歌えるなんて。夢って思い続けていると叶うんだな」と喜びを口にした。
「20th Orchestra Concert HYDE 黑ミサ 2021 Halloween」の様子 Photo by 田中和子 画像 8/12
「20th Orchestra Concert HYDE 黑ミサ 2021 Halloween」の様子 Photo by 田中和子 画像 9/12
「20th Orchestra Concert HYDE 黑ミサ 2021 Halloween」の様子 Photo by 田中和子 画像 10/12
「20th Orchestra Concert HYDE 黑ミサ 2021 Halloween」の様子 Photo by 田中和子 画像 11/12
「20th Orchestra Concert HYDE 黑ミサ 2021 Halloween」の様子 Photo by 田中和子 画像 12/12
ペレ草田にASH DA HERO、分島花音も参加したゲームコーナーを挟み、HYDE、DAIGO、手越の3人で歌われた「GLAMOROUS SKY」で一旦、幕を閉じた本編。幕間には11月24日にリリースされるHYDEの新曲「FINAL PIECE」MVのフルバージョンが初披露。その後、手越が「ウインク」等3曲を歌唱し、コンサートは佳境へ。ステージにはHYDEがオープニング主題歌を務めた映画『えんとつ町のプペル』の世界が具現され、作品から抜け出した様な船とともに主人公・ルビッチに扮したロザリーナと、プペルとなったHYDEが、同作品のエンディング主題歌でロザリーナの楽曲である「えんとつ町のプペル」を歌いエンディングでは船が浮上しそのまま客席の上を飛行するという大掛かりな演出で『黑ミサ Halloween』のクライマックスを飾った。曲中に『ここにいるみんなで星空を作ろう』というメッセージがスクリーンに映し出されると、それに応えたオーディエンス一人ひとりのスマートフォンに光が灯り、会場一面に『星空』が出現。ステージと客席が一緒になって映画のワンシーンをリアルに作り上げた、まさに感動の光景だ。「星はあるんです。普段は見えなくても一人ひとりが輝いています。だから何も見えなくてもひとりじゃない」と客席に語りかけたHYDEの言葉は今、この世界を照らす希望だと思えた。
ラストはフロート化した船の横にDAIGO、手越も乗り込んで「HALLOWEEN PARTY-プペル Ver.-」を合唱しながら客席の通路をぐるりと廻り、最後にステージに全員が集まって大団円。「またお会いしましょう。ハッピーハロウィン! みなさん、気をつけて帰ってね」と呼びかけては幕が閉まるまで名残惜しそうに手を振り続けるHYDEだった。
前述した通り、11月23、24日にはHYDEの地元、和歌山県・和歌山ビッグホエールにて『20th Orchestra Concert HYDE 黑ミサ 2021 Wakayama』が開催される。この1年を通じて自身のやり方でその音楽を提示してきた彼の、ソロ活動20周年の集大成となるはずだ。また、現在制作中のニューアルバムの全貌もそろそろ見えてくるのを楽しみに待ちたいと思う。HYDEの背中からまだまだ目を離すわけにはいかない。