「オメでたはいろんなきっかけを与えてくれてるなあって思います。オメでたを通じてみなさんとも出会うことができました。改めて、今日来てくれてありがとうございます。気合い入れてやってかなあかんなと思ってます。何があるかわからんってずっと思ってたけど、ほんとこんなことになるとは思ってなかったですよ。だからって心腐らせてもしゃあないし、やるしかないんですよ。なあ、324くん?」(赤飯)。「せやな!」(324)……真面目に想いを語っていると思ったら、突然324に話を振った赤飯。「やっぱ324くんの“せやな!”には説得力があるなあ。きみのギターソロが聴きたい」という赤飯の言葉を受けて「俺の感情のギター!」と叫んだ324は、華麗なギターソロを披露した。そして、その勢いのまま「頑張っていきまっしょい」がスタート。熱いサウンドをメンバー全員が一丸となって高鳴らせる様がかっこいい。ヘッドバンギングの嵐となった「生霊の盆踊り」。大浴場のように沸き立つフロア内で華々しい手拍子が打ち鳴らされた「スーパー銭湯~オメの湯~」。スクリーンに映し出された歌詞の言葉がオメっ子たちの心を鼓舞しているのを感じた「ザ・レジスタンス」。Wピースが客席で揺らぐ風景が、かけがえのないものをまざまざと示してくれた「オメでたい頭でなにより」……次々と届けられた曲たちは、どれも強烈な印象を残してくれた。
「今日は来てくれて改めてありがとう。ほんと白状するけど怖くて怖くて仕様がないわけ。だって、あんなに当たり前に身体をぶつけ合って、汗かいてたあの光景がもう1年半も失われてるわけ。このバンドを組んだのもフロアで騒ぐのが大好きだったから。そういうのを1人でも多くの人に知ってもらいたいと思ってこのバンドを組んでライブをやってる。だって、フロアで騒いでる時にまじで“ああ、生きててよかった”って心の底から思うもん。またあの日がいつ帰ってくるのかわからん。もしかしたら戻ってこないと思うとまじで怖い。だって生き甲斐だもん。具体的な答えはどこにもなくて……俺らができることって、お前らとライブするしかないねん。来たくても来られなかったやつがおるってツイッターで見て俺らめちゃめちゃ悲しい気持ちになったよ。でも、だからって止めるわけにはいかん。俺らができることってライブしかないねん! だから俺らはそういうやつらのためにも、きみらがいつでも帰ってこられる場所を守るためにも、ライブを続けようと思う。1年半、やりたくてもやれなかった曲をやりたい。ここに来てくれてるやつ1人1人と乾杯するつもりでこの曲をやりたい。俺たちの我慢し続けた1年半に、俺たちの5周年に、俺たちの守るべきこの場所に乾杯させてくれ!」――赤飯がオメっ子たちに呼びかけて、ラストに届けられたのは「乾杯トゥモロー」だった。イントロが鳴り響く中、エッチな模様に見えなくもない家紋が染め抜かれた旗を振った324とmao。ビールジョッキ型のバルーンを掲げたぽにきんぐだむ。銅鑼を打ち鳴らしたミト充。全く恥ずかしがることなく《Cin Cin》と熱唱した赤飯。5人それぞれが全力を尽くす様が眩しい。「くだらんことで笑える場所、それが俺たちの作りたい場所だよー!」という赤飯の言葉と共に本編に突入すると、爆音が会場をビリビリと震わせた。掲げられた無数の腕が揺れるフロアは、平和な風景そのもの。今は仲間同士で騒いでグラスを交わすことはできないが、そんな中でも人の心は温かく交し合えるということが証明されていた。
こうして終演を迎えた『5周年だョ!全員集合』。結成5周年を祝福する公演となったのはもちろんだが、ライブというもののかけがえのなさも心底実感させられた。フロアで歌って踊って “思いやりのぶつけ合い”ができるライブを取り戻すまでには、まだ時間が必要なのかもしれない。しかし、音楽を愛するミュージシャンと観客がいる限り、長年に亘って育まれてきた空間は、誰の手によっても奪い去れるはずがない。未来を諦めない意思を示し、再会を誓い合うかのように締め括られたオメでたの5周年ライブは、明日への活力となり得る余韻を残してくれた。
文:田中大
