興が乗ってきた筋少メンバーが今宵の宴のために迎えたゲストは、活弁士の山田広野氏。メンバー各人がカラオケで1曲ずつ自慢ののどを披露する前に、山田氏がその曲について一節活弁するという趣向だ。彼のツボを心得た曲紹介と合いの手に、場内は感心と爆笑の連続。
トップバッターを務めた大槻は布施明の「君は薔薇より美しい」をスター性抜群に、続く本城は堺正章の「街の灯り」を情感たっぷりに、これを受けた内田は野口五郎の「告白」を極めてムーディーに、トリの橘高は松崎しげるの「愛のメモリー」を熱烈な歌謡ショーのように歌い上げる。筋肉少女帯が繰り出す美声とサービス精神に圧倒された場内は、さながら大宴会の様相を呈していた。
「お客様にしてみれば、『妙なものを冬に観た』というお得感があったんじゃないかな」と大槻がカラオケコーナーを総括する。その後も飛び出すおもしろ話に客席の笑いが絶えることはない。そんな観客の反応に気を良くした大槻は、数曲のアンコール・カラオケをサプライズ披露することに。
特に、ライヴでほとんど演奏されたことのない「悲しくて御免なさい」と「リルカの葬列」の唐突な歌唱は、イベント当選者をおおいに喜ばせる粋な計らいであった。聴く者も歌う者も共に心地良いという、カラオケの理想形がここにある。
最後は「人から箱男(筋少×カラオケDAMコラボ曲)」をメンバー全員で歌い、宴の幕を閉じると、約1時間半に及ぶ貴重な空間を共有したオーディエンスは、大満足の表情で彼らのパフォーマンスを讃えた。どんな状況にあっても徹底的に観客を魅了する筋肉少女帯の美学が貫かれた、絶妙のイベントであった。
そんな彼らの現時点での最新シングル「人から箱男(筋少×カラオケDAMコラボ曲)」は、現在、カラオケLIVE DAM STADIUMで本人映像MVが楽しめる上に、筋少の演奏をそのまま楽しめる「まま音」フルバージョンで歌唱することも可能ということだ。是非ともこの機会にカラオケ店に足を運び、筋少メンバーたちとのコラボのひと時を楽しんでほしい。
また、筋肉少女帯は、3月に1989年リリースのミニ・アルバム「猫のテブクロ」完全再現ツアーを控えている。現在のメンバー4人が初めて揃った本作の完全再現に加えて、「11曲」が日替わりで演奏されるというこのツアーは、当時の空気を感じられるような見応えのあるライヴになるとのこと。更に3月8日には、LIVE Blu-ray/DVD「再結成10周年パーフェクトベストTOUR FINAL~六本木!」も発売されるのでこちらもチェックをお忘れなく。
2017年の筋肉少女帯も、これまでの活動で培った芸達者ぶりをファンに見せつけてくれそうだ。
(TEXT BY 志村つくね)