東京スカパラダイスオーケストラが3月20日にインターネット生配信でしか観ることができないワンマンライブを行い、 その模様を多くの人々のもとへ届けた。 これは、 同日に開催予定だった東京・国立代々木第一体育館でのデビュー30周年イヤーを締めくくるライブが、 新型コロナウィルスの感染拡大により中止になったことを受けて急きょ決定したものだ。
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今回のライブは通常のステージの上ではなく、 フロアライブ形式で行われた。 よって、 バンドの登場も全く違う。 本来であればステージ袖から登場するが、 9人の男たちはなんとフロアの入り口から登場。 インターネット生配信でしか視聴できないワンマンライブというのはもちろん異例だが、 実は何から何まで異例づくめのライブだったのである。 会場のバーカウンターにて大声で自己紹介をした9人は、 そのままフロアに設置された各自の持ち場へと移動し、 「HAMMERHEAD」をプレイし始めた。
厳密に言うと、 スカパラによるこうしたスタイルのライブは今年2回目になる。 初めての舞台は「SPACE SHOWER MUSIC AWARDS 2020」が行われた東京国際フォーラムだった。 あのときのライブを観ていても思ったが、 スカパラの面々がとにかく楽しそうなのが印象的で、 目の前に観客がいるかいないかは関係なく、 ステージで音を出す喜びに溢れていた。 デビュー30周年を迎えてもなお、 音楽に対する彼らの無垢な愛情は尽きるはずがないのである。 その印象は今回も変わらなかった。
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続く「DOWN BEAT STAMP」でがっつり熱気を高めたあと(不思議なもので、 観客がいなくても熱気は高まるのである)、 「みんな、 盛り上がってる? みんなで集まって団結することはできないけど、 離れてても団結してひとつになることはできるかなって思います。 パラダイスのなかで戦うように楽しんでくれよー!」という力強いメッセージを谷中敦(Baritone sax)が送り、 すかさず次の曲へ。 鳴らされたのは「遊戯みたいにGO」。 NARGO(Trumpet)の歌に合わせて、 手を左右に振るメンバーたち。 もちろん、 目の前にはスタッフしかいない。 彼らはカメラの向こうにいる顔も人数もわからない仲間たちに、 ひと言では表現しきれない熱い思いとともに手を振るように求めていたのである。 それはきっとみんなにも伝わっていたはずだ。
ひと呼吸置いてプレイされたのは「スペクター」。 延々と繰り返されるドープなベースラインにアナログシンセの音が絡みつき、 その上を管楽器、 ギター、 リズム隊が疾走する。
のっけから素晴らしい熱演が続いたところで、 スカダンスのレクチャータイムがスタート。 モンキーダンスから始まり、 あらゆるスカダンスを網羅するスカダンス講座が、 川上つよし(Ba)によって繰り広げられた。 ひとしきりレクチャーが終わったあとは実践編。 鳴らされたのは「Jamaica Ska」だ。 GAMO(Tenor sax)のアジテートに合わせて、 NARGOが踊りまくる。 中盤でガラッとサウンドの雰囲気を変えてヘドバンタイム。 これがとにかく楽しい。
面白いのが、 「ああ、 ここにたくさんの観客がいたらなあ……」というネガティブな感情がないこと。 恐らくこれは、 スカパラの面々がカメラの向こうにいる人たちに向けてしっかりと音を届けようとしているのが伝わってくるからだろう。 この日、 スカパラは決して何かが欠けたライブをしていたわけではない。 不思議な環境ではあるが、 観客との信頼関係がしっかり成立していた。
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「Paradise Has No Border」にはそれが顕著に現れていた。 いつもなら「一番盛り上がってるのはどこだー!?」と呼びかけるところを、 この日は「どこのカメラが一番盛り上がってんだー!」とGAMO。 そして、 複数のカメラのなかからクレーンカメラに目をつけ、 メンバーが一斉にその周りに集まって猛アピール。 こんなのも配信ライブならではだ。
