MCでは、 茂木欣一(Dr)から3万人が視聴しているという情報が伝えられ、 メンバーは拍手。 「代々木第一体育館(のキャパ)を超えちゃったねー!」と軽口を叩く谷中にハッとさせられた。 そうなのだ、 たしかに代々木公演の中止は悲しむべき出来事だったけど、 決して悪いことばかりではない。 距離的な問題やスケジュールの都合で観に来られなかったはずの人たちにも、 こうやって音を届けることができているんだから。
自身がメインボーカルをとった「銀河と迷路」のあと、 茂木は「こういう時間が作れて本当によかったよね。 今日、 本当はツアーのファイナル公演をやる予定だったんですけど、 こうやって音を出せる場を設けてもらえたことを本当に感謝しています」と話し、 そして叫んだ。 「みんなが見える。 みんなが盛り上がってる姿が、 何万人も見えるぞー!」と。 「本当に見えるよね」と相槌を打った加藤隆志(Gt)の言葉は決して嘘じゃないと思う。
続いては、 30周年ツアーの振り返りタイム。 アンコールでGAMOにドッキリを仕掛けたライブのこと、 加藤の故郷・鳥取での凱旋公演をソールドアウトさせたこと(「ここのソールドアウトは東京だとどれぐらい?」と聞かれた川上が「2万人!」と答えたのは笑った)、 昨年メキシコを訪れ、 メキシコ版グラミーで名誉ある賞を受賞したこと、 スペシャアワードでBEST RESPECT ARTISTを受賞ことなど、 話は尽きない。 そして、 おとといリリースされたばかりのベスト盤『TOKYO SKA TREASURES ~ベスト・オブ・東京スカパラダイスオーケストラ』の告知もし、 「4月からの31年目も、 スカパラのことを応援よろしくお願いしまーす!」と締めた。
前のめりに突っ走ってきたライブだが、 ここで雰囲気を変えて「メモリー・バンド」へ。 谷中はMCで、 一度友達になった人はずっと友達だと思ってるし、 バンドも一度メンバーだと思った人はずっとメンバーだと話した。 「そういうふうに思うことですごく力になる」と。 いつもは茂木と沖祐市(Key)の2人で歌う曲だが、 この日はリズム隊の5人がメインをとる特別バージョンで披露した。
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カツカツと鳴り響く足音のSEはメドレーの合図。 ハードナンバー「MONSTER ROCK」から始まる全7曲のスカパラ一大絵巻だ。 「ホールインワン」は谷中やNAGOが先頭に立って、 ハーメルンの笛吹き男のごとく皆を先導していく姿が滑稽で楽しい。 NARGOがけん玉の”ホールインワン”もばっちりキメた。 合間合間に様々なアイデアを仕掛けつつ、 メドレーも巧みに緩急をつけて進行していく。 ラストを飾る「White Light」まで、 よそ見するスキを全く与えないライブ巧者ぶりを見せつけた。
「みんな、 楽しんでるー!?」と叫ぶ加藤の声は興奮でかすれていた。
4万人を超えた視聴者が配信を観ていることを受け、 沖は「地平線を見渡す限りのお客さん」と表現し、 メンバーの笑いを誘った。 そして、 デビューアルバム「スカパラ登場」に収録されている「君と僕」を、 あれから30年の時を経た現在のバージョンで披露。 沖によるアコーディオンと口笛から幕を開け、 この長い歴史を噛みしめるかのように穏やかに音が紡がれていった。 これもまたいい時間だった。
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ツアー中、 各会場で手紙を読み上げていた谷中は、 この日のための特別な文章を読み上げた。 削るのも惜しいので、 ここに掲載したい。
『風のプロフィールの手紙』
今からみんなが、 知ってるようなことを話しますね。
今の世の中、 悪いことも目立つようになったので、 文句言う人とか、
いたずらに不安を掻き回すような人が沢山沢山いて、
大変な人がどんどん増えちゃってるように感じているひとも多いと思います。
でも自分は、 世の中に、 名も告げすに去っていくような無名の優しさや、 善意が沢山あって、
そういう人たちが世の中の大多数なんだと思ってます。
