パスピエが2020年2月16日に東京・昭和女子大学人見記念講堂で結成10周年記念公演「十周年特別記念公演 "EYE"」(読み:いわい)」を開催した。「チャイナタウン」「MATATABISTEP」などの代表曲、最新アルバム「more humor」の楽曲、さらに2月5日に配信リリースされた新曲「まだら」などを披露。10年のなかで積み重ねてきた音楽性をもとにしながら、最新のパスピエを提示する充実のステージを繰り広げた。
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この日のライブは4人編成のストリングス、パーカッション/ビブラフォンなどを加えた特別な編成で行われた。オープニング曲は、大胡田なつき(V)、成田ハネダ(Key)、三澤勝洸(G)、露崎義邦(Ba)の新体制になって最初の配信シングル「あかつき」。成田の生ピアノから始まり、バンドのアンサンブルと弦カルテット、ビブラフォン、そして、大胡田の叙情的なボーカルが融合。重厚にしてしなやかなサウンドが響き渡る。さらに独創的なリズムを取り入れた「ハレとケ」、“美しいものこそが、儚いものであった”というフレーズが印象的なポップチューン「永すぎた春」などを披露。大胡田なつきが「パスピエ、十周年記念公演“EYE”。来てくれてありがとうね。10年を一緒にお祝いしていってください!」と挨拶すると、満員御礼の会場から大きな歓声と拍手が起きた。
この後も、パスピエの豊かな音楽性をじっくり体感できる場面が続いた。80年代ニューウェイブを想起させる「ネオンと虎」、三澤のライトハンド奏法によるギターフレーズを軸にした「DISTANCE」、クラシカルな雰囲気のストリングスと壮大な広がりを持つメロディが溶け合う「あの青と青と青」。成田が手がけた弦カルテットのアレンジも絶品。“高度な音楽理論と際立ったポップセンスの融合”というこのバンドの特徴をしっかりと感じ取ることができた。
ここからはバンドメンバーだけで演奏。「ライブは毎回毎回“こんなことが起きるんだ”と想像できないことが起きるのが楽しい」(成田)というMCに導かれたのは、代表曲の一つ「チャイナタウン」だ。ややテンポを落とし、新たなアレンジを施したサウンドが新鮮。常にチャレンジを続けるパスピエの姿勢が強く伝わってきた。さらに「マッカメッカ」「MATATABISTEP」といったアッパーチューンで会場の熱気を上げた後、「つくり囃子」ではブレイクビーツユニット・HIFANAとのセッションが実現。サンプラー、CDJスクラッチなどを使ってリアルタイムで生み出されるビート、そして、高い演奏テクニックに裏打ちされたバンドの演奏が融合し、この場所でしか体感できないサウンドが広がる。HIFANAをリスペクトする大胡田は「いつか一緒にやりたいと思っていたので、すごく嬉しい」と喜びを素直に表現していた。
「大切なことって、お互いの関係のなかで、見えないところにあるんじゃないかと思っていて。それを伝えたいなと思ってバンドをやっているところもあるんだけど、こうやってみんなが集まってくれるのはすごく嬉しいし、これからもパスピエについてきてほしいなと。…10周年っぽい話をしてみました」という大胡田のMC、そして、1stフルアルバム「演出家出演」の収録曲「シネマ」からライブはクライマックスへ。音楽を自由に鳴らすことへの決意を反映した「正しいままではいられない」におけるエモーショナルな演奏とボーカルも強く心に残った。
