10枚目の新作オリジナル・アルバム『JAPANESE MENU/DISTORTION 10』の発売を3月18日に控えている清春が、2月9日、東京・恵比寿ザ・ガーデンホールにて〈TOUR 2020『JAPANESE MENU』〉と題した全国ツアーの初日を迎えた。この日は彼にとって27回目のデビュー記念日。1994年の黒夢がメジャー・デビューから満26年が経過したことにもなる。
場内が暗転し、ダンサブルなSEが鳴り響く。フロアを埋め尽くしたファンの前に清春が現れると、あちこちから祝福と歓声が乱れ飛ぶ。カリスマの第一声を心待ちにしていた観衆に放たれた1曲目は「EMILY」だった。意表を突いた幕開けに心奪われるうちに「Masquerade」「眠れる天使」と序盤からハイペースで華麗な楽曲が繰り出されてゆく。
これから各地での公演に足を運ぶ読者のためにも、あまり具体的な演奏内容には触れずにおきたいところだが、清春が華やかな叙情をテンポよくコントロールし、色とりどりに艶のある声を響かせていた点が印象深い。「今日はなんか、“間違ってる”みたいにいいね! “間違ってる”みたいにみんなの反応が早いですね!」と彼が独特の言い回しで手応えを口にするほどのパフォーマンスだったのだが、たとえば、オーディエンスを「Feeling High & Satisfied」で激しく挑発し、「ID POP」で「揺らせ! 揺らせ! 揺らせ!」と扇動した流れなど、清春ならではの非凡な切れ味を感じた。
鮮やかな緑のガウンをまとって登場したアンコールでは、「ミザリー」の演奏を途中で止めて、もう一度曲の頭からやり直すという場面も。「服が緑すぎて、それ以外考えられなかった」と微笑む清春を見て、観客は思わず笑みをこぼす。そんな和やかなやりとりの直後、神聖な儀式のごとくオーディエンスを導く「アロン」にも心打たれた。
ダブル・アンコールでは、久々の「忘却の空」から「BEAMS」へと繋ぐ、デビュー記念日にふさわしい選曲も披露された。祝宴を締めくくる「HAPPY」を気持ちよく歌い終えた後、満足げな笑みを浮かべて、「つらい時に思い出せるようなツアーにしたいと思います」と観客に告げた清春。何度も何度も感謝の言葉を述べ、光り輝きながらステージを去ったその姿が忘れられない。
