その後、INORANが「元気だったか? またこの4人でこのライブができて、本当に嬉しいです。今日はブチ上がっていこうぜ」と語り、観客の士気をさらに鼓舞させる強力なナンバー「Awaking in myself」と「2Lime s」をプレイ。
ソロデビュー作の『想』(97年)以降、INORANはミクスチャー、ヒップホップ、アンビエント、アコースティックなど、様々な要素を融合させながら、自身の音の探求を続け、8thアルバムの『Teardrop』(11年)以降は、現在の音楽性において重要な要素であるグランジ/オルタナに深く傾倒していった。また、18年のライブ映像作品『Override』以降、彼は自身の感情をよりストレートに演奏に込めるようになり、以降のライブはその激しい音の中に、より明確な説得力を宿すようになっていった。
なぜ彼が、よりピュアで初期衝動溢れる音を表現するようになったのか? その答えは間違いなく、この日のライブ演奏に集約されていた。そう確信できるほど、この演奏は今まで以上にエモーショナルで、その純粋な音の表情に心は強く揺さぶられた。そして、このライブを観たことで、彼の音楽性の進化と深化の全てに合点がいったような気がした。
Photo by:ヤマダマサヒロ@yamada_mphoto 画像 3/8
INORANは、その“ありのままの感情”を正直かつ、ロックな音で表すことを突き詰めていった結果、このスタイルに向かうようになり、その表現は『2019』のライブを経て、最も鮮明かつリアルに、オーディエンスへと届けられるようになったのだと…。
中でも、特に印象に残ったのが「Don’t Know What To Say…」だ。この曲は、Aメロにポジティブパンクを彷彿させる陽気なメロウさが宿り、この部分をバンドは笑い合い大いに楽しんでいた。
そして、Bメロからサビの暴れるような大きな盛り上がりでは、何かに怒っているような荒々しい感情を表していたし、ラストのMurataのギターソロはどこか切ない哀愁に満ち、そんな喜怒哀楽を実直に音に込めた演奏が実に痛快だった。
その後、INORANは「ライブって楽しいね。皆は楽しい? 皆もさ、日々の生活で人付き合いとか、大切な人とかの間でこうして欲しいとか、色々と思うことがあると思う。でも、人生って求めることよりも、与える方が大事で、それはいかなる時も同じ。実は俺今年はちょっと弱っているというか、色々あって疲れちゃったんだけど(笑)、こういう時こそ、与えることが大切なんだよね。だから、今ここにある美しい時のために、この曲を捧げます『Beautiful Now』」と語り、「Beautiful Now」を演奏。
