2019.12.27 公開
TK from 凛として時雨、ギリギリのバランスで美しさを醸し出すアコースティックセットでのワンマンライブ

Photography: 岡田貴之  画像 1/6

とても静かに、けれど確かに激しく心が揺れ動いていた。観終わった後、そのまま浸っていたい……そう強く願ってしまうほどに。

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12月23日。この日が誕生日でもあるTK(凛として時雨)のソロプロジェクトによる、ライヴ『Bi-Phase Brain “R side”』が〈Bunkamura オーチャードホール〉にて開催された。

〈大阪市中央公会堂 大集会室〉での公演に続き、2会場目にしてファイナルである。本公演は、『Bi-Phase Brain “L side”』と題し、10月に東名阪でおこなわれたバンド編成のライヴ・イベントと対になるようなもの。メンバーに、柏倉隆史(Drums/toe, the HIATUS)、鈴木正人(Bass/LITTLE CREATURES)、須原 杏(Violin)、小松陽子(Piano)を迎えたアコースティック編成だ。

 スタート時刻の19時15分ちょうど、ステージを照らすわずかな灯だけを頼りに、柏倉、鈴木、須原、小松の4人がそれぞれ自身の持ち場へ。メンバーが奏でる音が少しずつ重なり始めたところで、白シャツにブラックのパンツ、ルーフタイといつもとは雰囲気の違うTKが姿を見せる。観客からの大きな拍手に包まれながら、1曲目の未発表曲へ。〈人の愛し方を歌だけで伝えないで〉と歌われる冒頭から、思わず息を飲んでしまうような緊張感が走った。

TK from 凛として時雨、ギリギリのバランスで美しさを醸し出すアコースティックセットでのワンマンライブPhotography: 岡田貴之  画像 2/6

ソフトなTKの歌、言葉がどこまでもズシンと真っ直ぐに入り込んでくる1曲だ。まさに今響き渡る繊細な音楽を具現化したように思えてならなかったのが、大胆に、緻密に白い布で表現されたこの日の舞台美術。ファッションブランド〈suzuki takayuki〉や、現代サーカスグループ〈仕立て屋のサーカス〉で知られるスズキタカユキが2公演のためだけに手掛けた特別なステージセットである。続くは「this is is this?」、「fragile」。序盤から緩急を感じながらも、アコースティックという編成だけに、しなやかに、美しく折り重なる、という印象が耳に強く残っていく。

「ありがとうございます。TKです、こんばんは。メンバー紹介をします……しますね(笑)。ドラムの柏……」といったところで、つい言葉を噛んでしまうTK。その彼らしさに場が和み、TKにつられるようにして、客席からもほろこんだ顔がチラホラ。メンバー紹介し終え、「最後まで聴いてください」と話し、次の「seacret cm」へ。その後の「Signal」、「Showcase Reflection」でもそうだが、TKの歌と、4人の1音1音が非常に緻密に、そして丁寧に編まれていくゆえ、曲線を描くような切なく幻想的な感触がつたってくる。加えて、「make up syndrome」では、TKもピアノを弾き、クラシカルな雰囲気も生み出していった。

 ここでTKが「ゲストを紹介します」とステージに招き入れたのは、安藤裕子だ。センター下手サイドのイスに安藤が座ると、作曲をTK、作詞を安藤が手掛けたコラボ曲「Last Eye」へ。約3年前、安藤とTKが共演した際に初披露された本曲を、時間が経った今、またこうして2人の声が合わさって聴けることが嬉しい。柔らかく鳴り渡るサウンドと共に、そばでささやいてくれるような優しいTKの歌声と、包み込むような温もりのある安藤の歌声があたりに広がっていく。

TK from 凛として時雨、ギリギリのバランスで美しさを醸し出すアコースティックセットでのワンマンライブPhotography: 岡田貴之  画像 3/6

「Last Eye」の余韻を噛み締めたまま、次の「Shinkiro」も引き続き安藤が参加。比較的、軽やかなイメージが強いこの曲も、安藤の声も相まって、今日は湿り気を帯びた艶っぽいモードに。この後は安藤がステージ裏に戻り、TK、ベースの鈴木、そしてバイオリンの須原で「eF」、須原に変わりドラムの柏倉とで「Fantastic Magic」を演奏。音数が少なくなったというのに、サウンドは厚みを保ったまま。しかも、TKの息遣いまでがよく聴こえ、ふいにドキッとさせられてしまう。

「Fantastic Magic」の終盤には、3人の畳み掛けるアンサンブルの勢いにこの日一番の大歓声が上がった。「illusion is mine」では、TKがもう一度ピアノを弾き、まるで音が鳴らされる度に、光が灯るような儚さを見せ、本編ラストの「kathasis」へと繋いでいく。静と動が表裏一体であることを示すように、かつ壮大に演奏し、最後を締めくくった。

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