ピアニスト H ZETT M(エイチ・ゼットエム)がピアノ一台のみを使い、即興性の 高い、どう展開していくか予想もつかない演奏を繰り広げるコンサート「ピア ノ独演会」の今年最後となる「ピアノ独演会 2019 冬 -大阪クリスマス SP の陣 -」がクリスマスイブの 12 月 24 日、大阪市中央公会堂で開催された。
H ZETT M の気まぐれで自由な発想から 2011 年 12 月に始まったこのソロコンサ ートは丸 8 年を経て人気公演となっており、5 月の東京オペラシティ公演の成 功に続いてこの大阪公演も早い段階でソールドアウトとなっていた。 今年は、自身のバンド H ZETTRIO(エイチ・ゼットリオ)の活動と並行して全 7 公演が実施された。
Photo by Yuta Ito 画像 2/6
客席の灯りがゆっくりと落ち、満場の拍手に応えながら登場した全身真っ赤な 衣装の H ZETT M。おもむろにピアノに手を置くと、すぐにその独特の指捌きか らメロディが溢れ出した。
1 曲目は「高貴な連帯」。音が出た瞬間に一気に観客を世界に引き込んで行 く。
続いてはループマシンを駆使した「極秘現代」。重ねられていくピアノのフレ ーズが複雑に絡み合う、高度な演奏技術を活かした楽曲だ。シーケンスも織り 交ぜるそのスタイルで歴史あるホールが独特な空気感で包まれていく。崩した 形で「調律師のエチュード」「大西洋レストラン」と楽曲は続いて行き、観客 の視線が一心に注がれたその指先が音符を重ねていく。まさに聖なる夜を祝福 するかのような演奏だ。「ほろ酔いバランス」では鳥の声が鳴き、景色が一 変。「ランドスケープ」から電子音をプラスされた「その瞬間」であっという 間に第一部の幕を閉じる。
15 分間の休憩を挟んで、二部がスタートする。 今度は黒白のフォーマル衣装で登場。 スピーカーも照明も、舞台セットまでが取り払われ、まさにピアノ一台の演奏 となる。
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「永遠は見つからない」から始まり、ピアノの音のみで会場を埋め尽くすかの ように一層激しく、かつ繊細な指の運びが観客の度肝を抜いた。「ショーがは じまる」「水の流れ」と立て続けに進みながら、その演奏はますます勢いを増していく。そしてファンにとってはクリスマスプレゼントかのような往年の人 気曲「AKATSUKI」。客席からの大きな拍手に応えながら、最後は「新しいチカ ラ」と文字通り息つく間もなくあっという間に二部も終了。さらなる演奏を求 める満員のアンコールが会場に響いた。
