一瀬と共に柏倉、ウエノ、masasucksが退出。ここからが冒頭に書いた徳澤青弦とのセッションだ。最初に凄まじい歌唱力を見せつけた細美は、次にメンバーを呼び戻し、ストリングス導入バージョンで数曲を披露。そこで「Regrets」が流れた瞬間、あぁ、とはっきり思った。これはロックバンドで鳴らしてこそ魅力的な楽曲だ。柏倉の優しいビートとウエノの安定した低音に包まれることで、歌声はより柔和に響く。また楽しそうに楽器を鳴らすmasasucksらと目を合わせることで、場の空気もより温かいものになる。メンバーがここにいる、その認識がグルーヴが完成させるのだ。ソロでも十分に通用する喉を持ったシンガー細美は、「Little Odyssey」のような名曲を書きながらも、ただ美声で周りを圧倒させたいわけではなかった。まず、ここが居場所だと言えるホームが欲しかった。だから5人とバンドになりたかった。そんな10年前の願いがしっかり叶えられていることを、「Regrets」のグルーヴが伝えてくれる。もともと国際フォーラムの天井はかなり高いけれど、歌声はさらに遠くへ、さらに高い夜空へと、小気味よく飛んでいくようだった。the HIATUS Photo by 三吉ツカサ(Showcase) 画像 5/5
バンドを求めていたのは細美ひとりではない。「ハイエイタスは僕の大事な居場所になりました」と柏倉が語り、「ここにいたら間違いないな、曲がっていかないなと思う」と伊澤が素直に告白。「ハイエイタス11年目、始まります」とmasasucksが宣言すれば、「10年後に我々がどんな音を鳴らしているのか、すごく楽しみ」とウエノが気の早い話をする。「Storm Racers」や「紺碧の夜に」など大合唱ナンバーで締めくくられた本編。細美は「夢の中にいるみたいでした」と語ったが、消えてしまう儚さ、という意味ではないだろう。ずっと夢見ていたバンドの呼吸。渇望していた心の交換。その実感が確かにあったという意味で、まさに夢が具現化している一夜だ。10周年おめでとう。二度目のアンコールで鳴り響いた「Moonlight」は、自らに捧げる賛美歌のように美しかった。
(文:石井恵梨子)
the HIATUS 10th Anniversary Show at Tokyo International Forum
2019/10/01(火) 18:00 Open/19:00 Start
東京国際フォーラム ホールA
01.Ghost In the Rain
02.The Flare
03.The Ivy
04.Hunger
05.Servant
06.Thirst
07.Unhurt
08.Deerhounds
09.Horse Riding
10.Bonfire
11.Time is Running Out
12.西門の昧爽
13.Antibiotic
14.Waiting for the sun
15.Little Odyssey
16.Tree Rings
17.Regrets
18.Insomnia
19.Storm Racers
20.Lone Train Running
21.紺碧の夜に
〜ENC〜
22.Twisted Maple Trees
23.Firefly / Life In Technicolor
〜WENC〜
24.Moonlight
