8月25日、東京・渋谷ストリームホールにて、メリーが〈メリー東京圏沿線GIG #1 敷かれたレール ~銀座線編~〉と題された今夏のツアーの終点を迎えた。本ツアーは、その名の通り、銀座線沿線の会場に絞り込んでメリーがライヴを披露するという趣向。7月27日の浅草花劇場FC限定公演を皮切りに、銀座、上野、新橋、赤坂、青山、渋谷の計7会場8公演に及んだこの旅は、銀座、新橋、赤坂で全編アコースティック形式のショーを開催するなど、各会場でバラエティに富んだ夏の名場面を生み出した。
ツアーファイナルに先立って、筆者は8月14日の新橋BLUE MOODアコースティック公演を観たのだが、ガラ(Vo)、結生(G)、健一(G)、テツ(B)、ネロ(Dr)のメンバーに加え、サックス奏者1名を交えたアコースティック編成で綴られるメリーの楽曲の数々は、選曲、ムード、アレンジセンスのどれもが上質だった。洗練されたライヴ・レストランで、着席スタイルにて鑑賞するメリーの音楽は格別で、ステージ上のメンバーとの近さもファンにとって貴重な思い出となったはず。この日は、たとえば、情景が間近に迫るような「チック・タック」や場末の香り漂う「東京テレホン」などが絶品で、観客は思わず息を呑むほどだった。
予定外のダブル・アンコールでは、意外なアレンジが施された「Midnight Shangrila」に挑み、オーディエンスを楽しませた彼ら。このアコースティック形式の公演では、いつものメリーの情趣とはまた異なった魅力が全編に溢れている。こうした形でのライヴを定期的に観たいと願わずにはいられなかった。
そして迎えた銀座線シリーズ最終夜、8月25日の渋谷ストリームホールは、セットリストの半数に及ぶ楽曲に3名のホーン隊が参加した豪華な編成。このシリーズのために書き下ろされたSEの煌びやかなメロディーで幕を開けると、そこから先は、メリーの真骨頂と呼ぶべき、湧き上がる爽快感と染み入るエモーションがたまらないライヴとなった。
「Toxicosis Island」で場内はいきなり興奮状態に陥る。「Zombie Paradise~地獄の舞踏曲~」「BLUESCAT」「歌声喫茶『モダン』」と彩り豊かに目まぐるしく放たれる楽曲が心地よい。書き残しておきたい場面は山ほどあるのだが、このツアーファイナルでは、自然と体を揺らしたくなるような、メリー特有の躍動感が光っていたように思う。本編中盤の「sheeple」で見せたハジけた狂気なども見どころで、ホーン隊が退場した後に「F.J.P」や「消毒」などの激しいチューンを勢いよく繰り出した姿にも惹かれるものがあった。本編ラストの「最後の晩餐」の余韻のなか、5人のメンバーの表情が達成感に満ちていたのが何よりの光景。素晴らしいライヴを観ていると、時間が経つのがあっという間に感じられるものだが、この夜のメリーの演奏にはまさしくそんな迫力があった。
