韓国出身のロックバンドFTISLANDが5月5日、兵庫・ワールド記念ホールで『FTISLAND JAPAN LIVE TOUR 2019 -FIVE TREASURES-』ファイナル公演を迎えた。すでに発表されているが、このツアーがFTISLANDにとって入隊前最後のツアーとなるが、4月4日の東京・豊洲PITを皮切りに、ライブハウスからホール、武道館、そしてファイナルのアリーナまで、約1ヶ月にわたり13公演を行った。
入隊前最後のツアーファイナルということもあり、開演直前から流れていた日本9thアルバム『EVERLASTING』(3月27日発売)のリード曲「God Bless You」に合わせて手拍子が自然発生するほどFTISLANDの登場を待ちわびる様子の満員のファンたち。メンバーの登場を告げるSEは韓国1stアルバム『Cheerful Sensibility』(2007年)に収録されている「FT ISLAND」がアレンジされたものだったが、かねてから「日本デビュー10周年の来年はライブをすることができないので、インディーズ時代から今までの歴史を振り返る内容をこのツアーで見せる」と公言していたように、この曲はインディーズ時代のライブ定番曲。古参のファンの気持ちを高ぶらせる。そのSEに合わせてファンの手拍子が大きくなったところにミンファン(dr.)、スンヒョン(g)、ジェジン(b)が登場。ミンファンがタイトなビートをたたき出したところにホンギ(vo.)が登場すると、記念すべき日本メジャーデビュー曲「Flower Rock」になだれ込む。スピード感のあるロック曲でも、ひと言ひと言を大事に紡ぐホンギの姿が印象的だ。ファンはホンギと一緒に大ジャンプを決めたり、スタートから一体感を作り出す。
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FTISLANDが担当したアニメやドラマ楽曲のセクションでは、「SATISFACTION」の“シアワセの意味を探していた どこかにあると思った”という歌詞を“神戸にあると思った”に替えてファンに歌わせ、その大きな声を聴くとホンギがニッコリと笑顔を見せる。ホンギが主演を務めた日本のドラマ主題歌「ハルカ」では、スンヒョンが久々のラップを披露した。
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「みんなの声をもらうぞ!」というホンギの号令で、「AQUA」では“WOWOWO”というシングアロングが生まれる。その声を受け止めるように、大きく両手を広げるホンギ。そしてそのファンの声に自分の声をぶつける。唯一の韓国楽曲のセクションでは、重いロックビートに合わせてホンギ、ジェジン、スンヒョンがヘッドバンキング。その勢いに乗って歌うファンの声にホンギが歌で返す。「Pray」ではサビのシングアロングを“祈り”というタイトルのごとく、胸に手をあて受け取るホンギ。ホンギとファンの生み出す声は渦のようにからみあい、曲が終わると会場から大きな喝采が起こったが、歌でお互いを理解していくのを感じる。FTISLANDのライブでは、こういうステージの上と下で行われる音楽の交感が多いのだ。
激しい曲が続いた後は、クールダウンのアコースティックセットに。「インディーズ時代の曲をどうやって聴かせればいいか悩んだ」と話し出すミンファン。「それで季節に分けた曲をやるブロックを作りました。日本では春・梅雨・夏だけど、韓国では夏の後に梅雨がくる。それを知らなくて、韓国の順番になっています」とスンヒョンが補足。スンヒョンのアコースティックギターをバックにジェジンが春のイメージのバラード曲「soyogi」をソロで歌い出すと、そこにベースを重ね、スンヒョンにボーカルをバトンタッチ。サビでホンギのボーカルとミンファンのカホンが重なり美しいハーモニーを響かせる。夏のイメージの「Brand-new days」は、ホンギと会場のファンが交互にボーカルを執る。ツアー初日の豊洲PIT公演から、このスタイルを続けてきたが、アレンジで原曲と入りのタイミングが変わっていて、ポイントをそろえるのに苦戦していた曲だ。しかしファイナルでついに大成功して、ホンギも満面の笑顔で客席にサムズアップを送った。梅雨を彩る「Raining」は、ミンファンのボーカルからスタートし、ファンも一緒に歌声を重ねてゆく。サビをファンに歌わせ、ホンギがハーモニーを乗せる。「みんなの歌に重ねるのすごく好き。初日から比べると、どんどん上手くなっている」とファンを褒めたが、FTISLANDはメインボーカルのホンギだけが歌うのではなく、ジェジン、スンヒョン、ミンファン、メンバー全員がボーカルを執る。そしてそこにファンの歌が加わり、その場にいる全員で曲を完成させていく一体感が魅力なのだ。時に激しく、時に優しく、パワーで押すだけではなく多彩な表情で曲を作り上げていく。今回のツアーでは、特にこういう場面が多く、ファンのシングアロングを優しい瞳でみつめるホンギの顔が心に残った。
