これまで息ぴったりなギターセッションやハーモニーを聞かせてくれたさくらしめじだが、今回はそれがさらに進化。
冒頭バンドサウンドにも負けないアコースティックギターの音について触れたが、既存曲の『いくじなし』においても優しさだけではなく、2人の確かなテクニックによるギターサウンドがスパイスとなり、優しさに力強さや疾走感が加わったほか、クライマックスではドラムが力強く加わる事で、バンド感の強いサウンドとなり、1曲の中で異なる曲の魅力を見せ、既存曲ながらもこれまでとは異なる新たな魅力を加える事に成功していた。
また『でぃすとーしょん』では完全にこれまでの2人のイメージを覆すパフォーマンスを披露。
激しいロックバンドサウンドを聞かせる本曲で、ライブ中も「飛べ!」「こんなもんか!?」と俺様口調でドSに会場をあおり続ける姿を見せるが、今回なんと冒頭に彪我によるギタースラップを披露。
ギタースラップとは弦を指で叩き付けたり、はじいたりしながら独特な音を出すベースの奏法。
普段MCなどではほんわかした姿を見せている彪我が、曲が始まる前、静かになった会場でギターを2〜3回かき鳴らし、下を俯きながら、指をくいっと上にあげて無言で観客に盛り上がるよう指示した途端、突然スピード感のある激しいスラップを披露。会場はそんな彪我の姿に驚いた表情を見せる観客が多々現れていた。聴きごたえのあるギタースラップを堂々と弾きこなす彪我にはいつものほんわかした姿はみじんも感じられない。
楽曲が始まると、2人の声の特徴を活かした激しいシャウトと、バンドサウンドにギターの音の中に響きだす。
思わず2人がフォークソングユニットだったという事実を忘れそうになるほど、全くこれまでと異なる世界観でひたすらカッコよさを感じる楽曲も自分たちのものとしており、これもまた1つさくらしめじの魅力の側面としてリスナーを魅了していた。
また野音という大きな舞台で、2,000人を前にしながら、とても楽しそうに飛び跳ねたり、笑顔で自由に動き回り、音やライブ空間を楽しんでいる姿が見て取れ、その様子から余裕すらもあるのではと感じたほど。
そんな2人の空気感は音に乗り、空間を作り、観客に届けられていく。
観客も安心して、彼らの音楽とその場の空気に身をゆだね、楽しむことができたのではないだろうか。
常に進化し続け、“今が最高”という姿を毎回見せ続けてくれているが、今後も成長を重ね、将来的にはどんな姿を見せてくれるのか全く想像がつかない。そんな未知数のポテンシャルをこの日のライブで大いに感じさせてくれた。
一方MCでは従来のほっこりした姿の2人を見て取ることができ、音楽とのギャップに驚くとともに、高校生の等身大として、そして変わらない“さくらしめじ”としての魅力を楽しむこともできた。
今回は観客との距離の近さも大切にし、広い会場の中央にサブステージを用意し、後方の観客のそばに行って触れ合うようにライブパフォーマンスを行ったほか、移動中もインタビューなども行ったが、そこでも飾らない姿を多々見せてれた2人。
例えば、ファミリー席という親子連れの席に対して度々雅功が話しかける姿が見られ、移動のインタビューの際もこの席に座っていた女の子へ、しゃがみこんで目線を合わせて話しかけるなど誰に対しても丁寧に接する2人の姿を、ところどころで見て取ることができた。










