Photo by Viola Kam (V’z Twinkle) 画像 7/9
バンド史上最もゴージャスで艶やかな「ワガママで誤魔化さないで」や、温かなアレンジで届けた懐かしいナンバー「LIPS」で会場が特大のシンガロングに包まれると、「6月からツアーをやってきて、今日がいちばん楽しいです!」と伝えた山中。「ここから攻めさせてらいます!」とギアを上げて、後半はアップテンポな楽曲を畳みかけるオーラル恒例の「キラーチューン祭り」へと突入した。ここで山中が「KK、キラーチューン祭りやろうぜ!」と伝えると、「しょ、しょ、承知しました……人類を滅亡させよ」という不穏な言葉とともに、KK CUBEに異変が起こり始める。だが、ライブは続行。「横アリ、こんなもんか!?」と煽った「CATCH ME」、センターステージでフロント3人が激しく頭を振った「カンタンナコト」から、鈴木がスライディングしながらギターソロを繰り出した「狂乱 Hey Kids!!」へと、怒涛のアップナンバーで横アリのボルテージはマックスへと達した。本編のラストは「BLACK MEMORY」。無数のレーザーがお客さんの頭上を交差する1万2,000人の熱狂のなか、KK CUBEが煙を吐いて停止するという意味深な演出でライブを締めくくった。
アンコールでは、「いまは弱くても強くなれる。それを俺たちが証明するから」と真摯な言葉で伝えると、ピアノの旋律にのせて“また強くなって、この場所で再会しよう”という想いを込めた「ONE'S AGAIN」を披露した。ここで終演かと思われたが、会場が暗転したあと、山中が静かに問いかけた。「技術の発展が本当に経済の発展につながるのか。いや、衰退につながるのか。便利だと言いながら、何も考えずに手を出していないか。自分の考えをないがしろにしてないか」と。Kissesと Killsというふたつのテーマにわけて、この日、オーラルが伝えたかったことは、人間の感情の大切さだ。そのために、技術の発展が生んだ無感情な非人間の象徴として、KK CUBEという演出を使ってみせた。山中の言葉は続いた。「俺らはひとりでは生きていけない。なぜなら感情があるから。感情は自分に対して向けるものじゃない。人とぶつけるもの。それが、あなたたちはできていますか? 俺らは感情にこだわり続けます。この世から人間の感情がなくなりませんように」と。祈るように言葉を尽くしたあと、本当のラストを締めくくったのは「嫌い」だった。メンバーの背中を真っ白な光が照らし、シルエットだけが浮かび上がったステージ。そこで何度も“嫌い”というフレーズを叩きつけると、4人は何も言わずにステージを去っていった。
たとえ負の感情でも、自分に芽生えた感情を否定してはいけない。それが、この日、THE ORAL CIGARETTESが伝えたかったことだ。深すぎる愛情が憎悪を生むこともあれば、嫉妬や後悔が生きる原動力になることもある。いま、あなたはどんな感情を持っていますか? そんな言外の問いかけが、終演後いつまでも消えない余韻を残す圧巻のライブだった。