1月中旬からスタートしたmoumoonの「FULLMOON LIVE TOUR 2019 〜OFUTASRISAMA〜」が、追加公演の恵比寿ザ・ガーデンホールで国内公演ファイナルを迎えた。タイトル通り、メンバーふたりだけでステージに立つこのスタイルは、実に4年ぶり。前回はマシンを操る場面も多かったが、今回は演奏はすべて人力の完全アコースティック。柾がアコギのボディを叩いてテンポを出し、YUKAがウィンドチャイムを鳴らして歌い始めると、サーッと空気が浄化されたように、moumoonのファンタジックな世界が広がっていった。
「ラヴソングだけを歌う」をテーマにしたセットリストは、「何を歌ってほしい?」とファンに問いかけて得た結果を元に構成したという。「ハッピーだったり冷んやりしてたり、愛にはいろんな顔があるよね。どんなラヴを胸に抱いているかは人それぞれ。私は今、こんな感じかも、と、聴いていただけたらうれしいです」と奏でられたのは、「トモダチ/コイビト」、「声」、「Everyday」など、少しばかり地味で繊細な楽曲群。その隠れた味わいが、OFUTARISAMA独自のアレンジで最大限に引き出されていく様は、痛快なほどだった。
たとえば柾は、さまざまなカッティングの妙に加え、高いフレットでシーケンス・サウンドのような音を出すなど、ギターという概念にしばられない工夫を凝らす。YUKAは、次世代電子パーカッションとして話題のaframeを「だいぶ一体化してきた」と語るほどに使いこなし、リズムを刻んだり、不思議な効果音を出したり。どの一音もどの一声も無駄なく必然で、その鳴り始めから終わりまで丁寧に魂が吹き込まれている。楽曲の世界観と真摯に向き合うふたりのプレイ・マナーは、奇を衒うとは無縁のエレガントなものだった。
そのクライマックスのひとつが、「意外にもアンケートで一番人気でした」というMCで始まった「Will you?」。快感中枢にくるYUKAのハイトーンと柾のコーラスが讃美歌のように美しいこの曲で、後半サッとバイオリンを抱えたYUKAは、柾が繰り出すアイリッシュな響きに乗って、思うままのフレーズを奏で、ディレイを駆使して洪水系サウンドを即興的に構築したのだ。これが絵画的かつ宇宙的で、凛と弓を滑らせるその姿が本当にカッコく胸を打った。「立っちゃおうか」と始まった今日イチ元気な「Yes」は、柾の独特な奏法とYUKAのaframeのワザとで、オーガニックEDMと呼びたくなるような新境地。聴き入るばかりだった観客も、ここでは堰を切ったように手拍子で盛り上がった。
