やがて、氷った冷たい海の中で煌めく光のような、透明感のあるギターの音色が響き始める。心象風景を思うがままにスケッチするようなkenの詩的なギターソロはやがて、「MY HEART DRAWS A DREAM」のイントロへと発展した。hydeがセンターステージへと歩み出て、大きく両手を広げると、yukihiroの刻むリズムだけを残し演奏を止め、ファンの合唱にメンバーも耳を澄ます。その場に居合わせることで、大きな愛をごく自然に噛み締めることのできる、稀有な曲である。そんな幸福感の中、アカペラでスタートしたのは「Hurry Xmas」。コーラスするtetsuyaにhydeが近付き肩を抱くと、会場は大歓声。LEDのツリーが出現し、客席のL’edバンドも赤白緑のクリスマスカラーで点灯。ジャジーで軽やかなこのクリスマスパーティーソングには、理屈抜きの楽しさがあった。
エンジン音を皮切りとする「Driver’s High」では、花火が炸裂してボルテージが上昇。kenはセンターステージへ移動、yukihiroがメインステージを守り、hydeとtetsuyaはそれぞれ花道両端へ。視界が一気に開けて行くような明るさと疾走感が歌と演奏から迸っていた。その勢いのまま、「DIVE TO BLUE」へと雪崩れ込むと、メロディアスかつ滑らかでありながら凄みも感じさせるパフォーマンスで圧倒。カラフルなバルーンがアリーナにいくつも弾み、その中から小さな風船が溢れ出していく。一旦メンバーはステージから姿を消し、10人ほどのサンタクロースがアリーナに登場。大きな白い袋からプレゼントを客席に投げ入れる、という微笑ましい演出を見せた。
撮影:今元秀明、岡田貴之、緒車寿一、加藤千絵、田中和子 画像 8/14
撮影:今元秀明、岡田貴之、緒車寿一、加藤千絵、田中和子 画像 9/14
センターステージに、サンタクロースの群れに紛れて一瞬だけサンタ衣装をまとったhydeを筆頭に、メンバーが再登場。「クリスマスっぽくアレンジしました」(hyde)という言葉通り、kenとtetsuyaがハーモニーを響かせる美しいコーラスを添えた「未来世界」アカペラヴァージョンは、しっとりとした珠玉の仕上がり。tetsuyaはアップライトベースでメロディーを慈しむように指を運び、情感豊かなフレーズを奏でていく。「メリークリスマス!」と歌に織り込んで曲を終えると、スクリーンには宇宙の映像が広がり、20年以上ぶりに「静かの海で」が披露されたことに驚嘆。精巧に設計されたライティング、スペイシーな映像、そこに重ねて映し出されるメンバーの姿…それらすべてが合わさって、曲の世界を美しく具現化。<feel heavenly>とメンバーも観客もコーラスすると、まるで讃美歌に包まれるような厳粛な心地に。この上なく神秘的な体験だった。宇宙的な質感はその後エレクトロなSEへと受け継がれ、「trick」へと突入。4人はギターを構え、花道のスライディングステージに立ち、順にヴォーカルを執っていく。メインステージへとたどり着くと、最後にhydeが歌唱。4人が横一列に並んでパフォーマンスする姿は、凄まじいオーラと迫力。いつまでも歓声が絶えなかった。
撮影:今元秀明、岡田貴之、緒車寿一、加藤千絵、田中和子 画像 10/14
撮影:今元秀明、岡田貴之、緒車寿一、加藤千絵、田中和子 画像 11/14
歴代のレパートリーに並んで、近年の楽曲群も実験心に富んでいるのがL’Arc~en~Cielの凄み。4人それぞれに抑制と解放のバランスが絶妙だった「X X X」、怒涛の転調と動き回るフレーズがひしめいているのに、まるでシャンパンの海で揺蕩うような夢見心地に誘った「Wings Flap」。この2曲で見せた洗練と官能、妖艶さは成熟した大人のバンドならではだと言えよう。「Link」を放つと、ゴールドやオレンジの銀テープが噴出。弾けるような明るさと、終盤が近付いて来た寂しさとが入り混じり込み上げてくる。メンバーも観客もジャンプやハンドクラップを繰り返し、全身を音楽に委ねていた。「皆さん楽しんでるかな? 僕も楽しめております。皆さん素晴らしい!」と笑顔を浮かべるhyde。「今回は、1年8か月ぶりにL‘Arc~en~Cielが揃ってるんですけど、その時(2017年4月の東京ドーム公演)に〝聴きたい曲″を募集したわりにはあまりやれなかったので、反省して、その上位から冬っぽい曲を選んで今日はやらせてもらってるんですけど」と明かすと大きな拍手が起きた。「次の曲はアマチュア時代からやっている長い曲です。案外クリスマスっぽいなと思ったので、選びました」と、「White Feathers」を披露。眩い白い光に照らされるステージに羽根が舞い落ちる中、しっかりと呼吸を全員で合わせ音を奏でていく4人。たとえ実際に羽根が降ってくる演出がなかったとしても、聴き手の脳裏に羽根を想い浮かばせたであろう、豊かなイメージ喚起力があった。
撮影:今元秀明、岡田貴之、緒車寿一、加藤千絵、田中和子 画像 12/14
撮影:今元秀明、岡田貴之、緒車寿一、加藤千絵、田中和子 画像 13/14
