「急に寒くなりだして、みんな風邪ひいてないかなって心配だったんですけど、今日無事に会えて本当に良かったです。がむしゃらに6年間やってきつつも、みんなの支えがなければ今こうしてステージに立って歌えていなかったと思うので、本当に感謝しかなくて……。来年から新しい景色、色んな挑戦をしたいと前向きに思うようになったのもみんなのおかげです。デビューした頃は下ばかり向いていて、MCだってこんなに喋っていなかったかもしれない(笑)。歳を重ねて成長してこれたのも、みんなの温かさと笑顔があったからだと改めて強く感じています。何より、皆さんも明日から苦難もあれば喜びもあり色んな日々が巡っていくと思うのですが、悔いのないように過ごしていって欲しいなと思います。」(新山)
そして届けられた本編最後の曲は、約2年前の誕生日にリリースした7枚目のシングルより、「もう、行かなくちゃ。」。この曲は20歳になる直前、映画の主題歌用に書き下ろした作品。「様々な葛藤がある中、殻を破って新たに進んでいきたい」という自分自身の思いも投影させながら作った曲だ。ひと回りもふた回りも大人になった22歳の彼女の歌声や表情からは、自分自身が選んだ未来に対して、一切の迷いのない固い決意が感じられた。
今この瞬間の充実感と、ライブ後の喪失感への不安が入り交じる独特の高揚の中、自然と湧き上がったアンコールの波。しばらくしてステージに戻ってきた新山は、冒頭アカペラで歌い出す「ありがとう」を、どこか憂いを帯びながらも真っすぐ芯の強さを宿した歌声で届け、改めて感謝の想いを表した。
「今日は真っさらな気持ちでみんなの前で歌えて、本当に良かったです。最後は勿論もう分かってると思いますが、この曲で締めたいと思います。みんな大合唱しちゃっていいので、一緒に歌ってください!」(新山)
晴れやかにそう告げると、メジャーデビュー曲「ゆれるユレル」を笑顔で歌い、およそ2時間にわたるライブは感動に包まれながら幕を閉じた。
そして演奏後はアーティスト然とした佇まいで颯爽とステージを後にした新山だったが、鳴り止まない拍手に応え再び登壇。達成感に満ちた、そんな清々しさを漂わせていたが、「ずっと応援しているよ」などの声援が飛んだり、終始泣き顔だったファンが必死に顔を上げ拍手を贈る姿を目にしていると、とうとう耐えきれず背中を向け涙を拭った。
「絶対泣かない予定だったのに、すみません(笑)。どんな形であれ、これからも大好きな音楽は私の中でずっと鳴り続けていきます。みんなもそれぞれ自分の道を悔いのないよう歩んでいってください。“一緒に、がんばろう!!”」(新山)
最後は彼女らしい飾らないMCで締めくくり、ハートウォームなエンディングを迎えた。
自分の居るべき場所を探し続け、もがき続けてきた新山詩織。そんな彼女の音楽や存在が、今では多くのファンの心の中に住み着いていることを、改めて確信出来たかけがえのないステージになったのではないだろうか。そしてこれからも彼女の音楽への情熱は何ら変わらず続いていくことを指し示す素晴らしいライブだった。
(Text by 松原由香里 from music freak magazine編集部)
