ーーもう一つ。 河邉さんも学生のみなさんと同じく、 特別な存在ではないからこそ悩むことがあるというメッセージも。
そうですね。 昔は芸術家というのは、 特別な人にしかできないと思っていたんですよ。 だからメンバーや環境に恵まれてデビューしたものの、 サラリーマン一家で育って、 普通に大学生活を送って生活してきた僕はどうなんだって劣等感を抱くことがありました。 だけど、 小説を書いていくうちに、 自分の育ってきた経歴や見てきた景色があるし、 僕にしかいない家族や友達がいることを再確認できて。 それは他の人にはないものだから、 特別じゃないかもしれないけど唯一無二である。 そういう自分だからこそ作れるものがある、 と信じることができたので、 それを学生にも知ってもらえたらなと。
ーーデビュー、 大学卒業から約10年経って、 小説を手がけた今だからこそ話せることが詰まった講演会だったのですね。
まさにそうですね。 何かを作るということは、 自分自身を掘り下げて表現していくこと。 小説なんて特に、 ひとりでひたすら自分自身を掘り下げて作っていきますから。 その中で、 「自分のアイデンティティってなんだろう」って考えていくうちに気づけたこともあったので、 そういった意味では小説を書いたことで成長した部分もある。 なので、 今だからこそ話せたことだったと思います。
講演が始まるギリギリまで、抜かりなく資料に目を通して準備する姿も 画像 9/10
ーー講演の最後には、 次回作の紹介もされていましたね。
はい!来年の春に、 2作目となる「流星コーリング」の発売を予定しています。 これは、 実際に2020年に広島で降る予定の人工流星というものに着想を得ていて。 広島を舞台に、 天文部の高校生が人工流星を見にいく物語になっています。 よりリアルに描くために、 実際に広島に取材に行って、 どんな言葉を話しているのかなど調べて丁寧に書いています。
ーー今回は小説を基にしたアルバムをバンドで制作する共同プロジェクトに。