大学の「ゼミ」形式で、学生とディスカッションするように進められた 画像 3/10
1つめのテーマ「哲学」とは、 河邉が大学で専攻していた学問である。 集まった学生の中で、 哲学を先行している学生がいなかったため、 より興味を持ってもらおうと、 どういった学問であるかをわかりやすく丁寧に解説。 幼少期に「心ってどこにあるんだろう?」と疑問に思ったことを機に、 哲学を学ぶ道を選んだという経緯、 なにより哲学の面白さ、 学ぶことでどういった場面で役立つのかなど、 学生と会話するように楽しみながら語られていく。
続く、 2つ目のテーマ「歌詞」へ。 大学で「哲学」を学び、 論理的に考える力を養ってきたからこそ、 今のバンド活動と彼の作詞に大きく生かされていることを明かす。 実際に、 楽曲「心の中まで」を聴きながら、 スクリーンに映し出された歌詞にある哲学的なとらえかたを解説する場面も。 その上で、 歌詞の魅力について、 「論理的に考えて答えを出す哲学と違って、 歌詞は心の通ったものなら論理的でなくても音の力が合わさって人を感動させることができる」と河邉。
「哲学」と「歌詞」の間に、「小説」があると、河邉 画像 4/10
そして、 3つめのテーマ「小説」は、 「哲学」と「歌詞」の間にあり、 いずれとも親和性があるのだという。 哲学を学び、 その考えを作詞に生かしてきた河邉だが、 「歌詞には音に合わせた言葉の数など制限がある。 そうじゃないところで、 音楽がないところで戦ってみたらどうなるのか?」と関心を抱いたことがきっかけに、 小説の執筆にのめり込んだのだという。 そして、 大学で学んだ哲学の中でも、 特に研究してきた「夢」をテーマに、 「夢工場ラムレス」を書き上げたのだという。
また、 小説の執筆を始めたことで、 変わった意識があったそう。 ごく普通の家庭で不自由なく育ち大人になった、 決して特別ではない自分に、 ずっと劣等感を抱いてきたという河邉。 デビューを果たして上京するも、 周りには名だたる先輩アーティストや活躍している同世代ばかりという環境に、 「みんな才能があるのに、 努力を惜しまない人ばかり」と焦燥感にかられたという。 音楽も作詞も「自分じゃなくてもいいのでは?」と感じていたところで小説に出会い、 「そんな風に悩んでいるところまでひっくるめて自分なのでは?特別にはなれない自分にしか書けない物語があるのでは」と気づけたことで、 視界が開けたのだとか。
河邉の過ごした学生生活、バンド活動、そして作家デビューは、全てがリンクしているということが知れる講演だった 画像 5/10
「大学でデビューしたりして変わった学生時代に思えるかもしれないけど、 意外と普通の人なんです。 みんなと一緒で、 今もどうしたらいいか悩むことがたくさんある」と、 あくまでも特別じゃないと語る河邉。 そんな彼が等身大で紡いだ言葉だからこそ、 WEAVERの音楽が多くの人の共感を得て胸を打つのではないか。 そんな彼の実体験がベースにある小説だからこそ、 リアルな描写がより読み手をファンタジーな作品世界に没入させるのではないか。 そんな彼の創作の原点を知ることができる、 講演となっていた。
質疑応答では、学生たちから等身大の疑問が続々と寄せられた 画像 6/10
最後には質疑応答タイム。 就職活動や卒業論文の相談といった学生ならではの悩み、 またバンドのメンバーとの関係性や作詞における考え方など、 思い思いの質問が学生から投げかけられ、 すべてに真摯に答える河邉。 講演時間と変わらぬぐらい、 たっぷりと学生の質問に応えたあとはサイン会を実施。 記念撮影にも応え、 自身の手がけた小説をきっかけに、 母校の後輩たちと普段の音楽活動とはまた違った密な時間を過ごした。