だが、 たとえば“チェンジユアワールド”のように、 4人それぞれの歌心が絡み合ってグルーヴになっていく楽曲こそ、 ストロングスタイルのロックバンドとして突き抜けようとするストイックさと鍛錬と真摯さを証明していると感じるアクトだ。 冷静と情熱。 やんちゃなパフォーマンスと、 それを支える確かなスキル。 くるくるとカメレオンのように表情を変えていくバンドの姿が楽しい。
牧「大好きな10-FEET先輩と、 初めての2マンライブです! 思えば、 僕の友達のお兄ちゃんが俺の友達にハイスタ(Hi-STANDARD)の音楽を貸して、 それを僕らにも回してくれて。 そこでパンクとロックを初めて体験しました。 そこからアメリカの音楽に興味を持って、 SUM 41だったり、 MxPxだったり、 遡っていったときにRAMONESに出会ったりしながら、 The Beatlesに出会って。 すべてパンクやメロコアに出会ったのがきっかけでした。 たとえ音楽性は違っても、 僕らと10-FEETが通じているのは、 音楽が好きでライブが好きだっていうところだと思います。 だから最高の夜にしたいと思うんです」
というMCもあったように、 単なる「先輩との勝負」という意味だけではなく、 己の音楽の原風景と邂逅するステージでもあったのだろう。 “おはようカルチャー”、 “SUMMER BREEZE”、 “カウンターアクション”と曲を重ねるごとに、 つんのめる寸前を維持しながら駆け抜けるスピード感とスリリングさがグングン増していく(ドラムのシンバルが吹き飛んでしまう一幕も)。
go!go!vanillas_LIVE HOLIC/撮影:西槇太一
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<踊れ 平成ペイン/あなたと行くのさ この道の行く末を/照らせ 平成ペイン>(“平成ペイン”)と歌う通り、 平成世代(=go!go!vanillasの世代)の鬱屈を受け止めてその先へと突き抜けるための闘争心がこのバンドを突き動かしている。 どの世代にもぽっかりと存在してきた退屈を蹴散らしていくための音楽としてロックに恋い焦がれ、 その根源を掘り起こし、 ハッピーな瞬間への執念をメロディにする。 そんな、 go!go!vanillasの核心が生々しく伝わるアクトだった。 ライヴ終盤に牧が言い放った「負けらんねえ」という言葉。 それを10-FEETがどう受けて立つのか——vanillasが去った後も、 そんな期待と興奮がライヴハウス全体に充満している。 このゾクッとする空気こそ、 2マンライヴの醍醐味だ。
go!go!vanillas_LIVE HOLIC/撮影:西槇太一
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10-FEET
10-FEET_LIVE HOLIC/撮影:西槇太一
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そして、 続いてステージに立った10-FEET。
「元気かい、 元気かい。 俺ら勝手に行くから。 モタモタしてるヤツは置いていくから。 それぞれの楽しみ方があると思うけど、 ちょっとしたことくらいで怒んなよ。 みんなありがとう、 責任持ってめちゃくちゃにします」——。
柔らかい口調で、 しかしどこか鋭い目つきで挨拶したTAKUMA(Vo./G.)。 そこから披露されたオープニングナンバーは“JUNGLES”だ。
「vanillasから受け取ったバトンを熱々のまま…、 行こうぜ!」
ステージとフロア双方のウォー、 オー!の怒号がクロスして、 すし詰めのオーディエンスと10-FEET間の垣根が一瞬にしてぶっ壊される。 先のTAKUMAの言葉通り、 目まぐるしい展開で突っ走ってオーディエンスを一気に引きずり上げる“focus”、 “SHOES”と畳み掛け、 ノンストップで“1 size FITS ALL”までを一気に駆け抜ける、 あまりに強烈な「先制パンチ」だ。