「歌バカ」を自認し、 歌を届けることに心血を注ぎ続ける求道者、 平井堅。 お酒を嗜みながら大人が楽しめるライブをコンセプトに、 1998年から行われてきた「Ken's Bar」が20周年を迎えた。 毎回チケット争奪必死の超人気ライブのスペシャルバージョンを、 思い出の地であるアメリカ・ニューヨークで開催。 シンガー・平井堅の魅力を濃密に堪能できるプレミアムな夜となった。
ドレスアップした紳士淑女がグラスを傾けながら、 主役の登場を今か今かと待ちわびている。 期待感で膨らむ空間にピアノの調べが柔らかく流れるのもまた、 アコースティック編成でライブを行う「Ken's Bar」らしい。
ステージに平井堅が姿を見せると、 場内からは大きな拍手と歓声が沸き起こりソニーホールの熱がぐっと高まった。 「Ken's Barへようこそ」と挨拶してから、 弾むようなピアノに導かれて歌い始めたのは米国を代表するシンガー、 フランク・シナトラの名曲「Theme from New York, New York」。 日本人で初めてエンタテインメントの殿堂・アポロシアターでのアマチュアナイトにゲスト出演し、 レコーディングでも訪れているニューヨークは、 平井にとって特別な場所だ。 その大切な街への愛と敬意を、 まずはこの歌で表したかったのだろう。
「こんばんは。 こんなにたくさん来てくださってありがとうございます」と、 謝意を伝えた平井。 「今回のライブは、 自分にとってご褒美だと思っています。 今夜も命がけで歌います」と、 溢れる胸の内を語った。
ギターの優しい音色とともに「魔法って言っていいかな?」を歌ったかと思えば、 世界的に大ヒットしたジョージ・マイケル「FAITH」をファルセットを用いてセクシーに歌い上げた平井。 パーカッシブなアコースティックギターのリズムに体を揺らしながら、 「LADYNAPPER」を艶っぽく歌うなど、 曲ごとに繰り広げられる大人な愛の世界に、 オーディエンスは瞬く間に引き込まれてしまった。
と、 ここでファン待望のリクエストコーナーへ。 平井が投げたボールをキャッチした観客が指名した平井のオリジナル曲を即興で歌うという趣向だ。 幸運にもボールを受け止めた観客は「ライブで聴いたことがないから」と、 「wonderful world」を所望した。 意外な選曲にやや驚いた様子で、 ギタリストと即興の打ち合わせを開始。 普段はリハーサルでしか見られないような素顔が覗けるのもプレミアムな「Ken's Bar」ならではだろう。 平井自身も「18年ぶりかもしれない」と言って歌い始めたレアな楽曲だったが、 セクシーでテンダーな歌声は十分にオーディエンスを魅了していた。