6年間の病気療養を経て2016年8月13日、故郷である北海道のRISING SUN ROCK FESTIVAL2016 in EZOのステージにて鮮烈な完全復活を遂げた大黒摩季。長きに渡るフラストレーションを放出するが如く、その勢いそのままに去年の5月、デビュー25周年をまたぎ1年半に及ぶ全国47都道府県ツアー85本を完走という偉業を果たした。
かつての巨像との戦い、新たなる進化を繰り返しファンとの一体感を全身にまとい長い旅の道すがら、活動休止期間の赤裸々な想いを消化し、今度は2010年8月発売のアルバム「すっぴん」以来8年ぶりとなるオリジナル・アルバムをリリースする。それは、その日々を語りつくすが如く、復活後に制作された新曲が実に25曲、さらに敬愛するアレサ・フランクリンのカヴァーを含めて全27曲収録の圧巻の2枚組オリジナルアルバムとなった。
『 大黒摩季という歌手は、生命線である下腹部の腹筋を2度も開腹して、二度死にました。だから
今はすべてが奇跡。このラッキーがいつまた終わるかもしれないと思うと、今がすべてなんです。
年齢的にもう緩やかに活動しようとは思いながら、気づくと私に明日はないと思って今日を全力で前のめりに生きてしまっています(苦笑)。』(大黒摩季)
この、まるでランナーズハイを続けているかのようにタフな活動の根源は、病気療養中に感じた絶望感からくる底知れぬ危機感なのかもしれない。
さて本作の内容的には、2年前にリリースされた「Greatest Hits 1991-2016 ~ALL Singles+~」がシングルを中心とした「大黒摩季、デビューからの25年を集大成するアルバム」であったのに対し、その間に培われた音楽観、波乱万丈な人生をありのままストレートな言葉で綴る歌詞センス、そしてミュージシャン仲間との絆、病気により奪われた音楽活動へのフラストレーション、エネルギー、それらすべてをつぎ込んで作り上げた生粋のオリジナル「大黒摩季 第三章のファースト・アルバム」と言っても過言ではない。
作品的には、大黒摩季の鉄板ナンバーでもあるアゲアゲのHyperデジロック・サウンドに、聴く人を鼓舞する“熱いメッセージソング”。 さらに、現代の様々なジャンルを巻き込むミクスチャー・サウンド、2000年代になって主流となったデジ・ロックから遡り、90年代J-ROCK サウンド、60年代~80年代を彷彿とさせるクラシックROCK、BEAT ROCK、HARD ROCKなど様々なロック・スタイルが表現されている。また、「やっと歌ってもいい年頃になったので♪ 」とストレートなブルースにトライしてるのも面白い。
